2 今はそれどころではないのだけど
海側の神殿である。
海の神々は海のパトロールを交代で続けていた。海の上を飛んでいる魔物を倒したり、海岸に近い場所に出た魔物退治もしている。そして神殿の広間にて、魔法の鏡で戦場の様子をみんなで眺め、応援していた。
「アー疲れた。今どんな様子?」
よろよろしながら海の女神セスティナが広間に戻ってきた。
「あーなんてことだー」
「うわーん」
「わーん」
鏡の前には20人ほどいたが、みんなが泣きわめいている。セスティナの母エキドナはハンカチで顔を覆っていた。
「一体何があったの?」
「カ、カサンドラ様が、カサンドラ様が消滅してしまったんです」
海の妖精の一人が言った。
「はあ!?」
「若い男の子をかばって。でもその男の子も消滅してしまって」
「若い男の子って」
「まさかそんな……」
「あ、ああ、ヤツがまた!」
「逃げて!」
「逃げてー!」
「やめてー!」
鏡に映る魔物は、人のような姿をしていた。かなり重い魔の力を持っている。鏡ごしで見るだけで、セスティナはぞっとして腰をぬかすほどだった。見るだけでわかる。この魔物はかなり強い。しかも高位の女神であるカサンドラを消滅させてしまうなんて。その魔物が、キュリアに迫っていた。
「やめてくれー!!!!」
「だれか助けて!」
みなキュリアを心配して泣き叫んでいたが、あの魔物を倒せる者がいるとすれば、ハロルドぐらいしかいないだろう。
「ハロルド早く来てよ。何してるのよ!」
キュリアの顔が恐怖で引きつっている。周りの神々は助けようと魔物を攻撃していたが、その魔物は武器でその攻撃をかわしていた。
その時、キュリアと魔物の間にすっと入った神がいた。神々しいまでの光を放つ男の神は、魔物に攻撃し、足を止めていた。魔物は苦しんでいた。さらに、なんとカサンドラとジュリアンが復活したのである。
「おっ!?」
「え?」
「ええ?」
「おおー」
「おおおおー!?」
海の連中は涙を拭いて拍手喝采を送っていた。
「えーと、あれはだれかしら。あの髪、ルチアっぽいけど」
セスティナが聞いた。
「ルチアね」
エキドナが言った。
「え? ルチアって、男だったの?」
鏡に映る神は、どこからどう見ても男である。
「え? ええええ?!」
「でも、さっきルチアちゃんは大人の女性でしたよ」
海の妖精が言った。
「そうでしたよね。さっきは大人の女性でしたよ」
「どーいうこと?」
「もしかしたら、ルチアは男にもなれるのかもね」
エキドナが言った。
「えー?」
鏡にはルチアがいろいろする場面が写されていた。
「かっこいい。ルチアが男ってことは、私とルチア、結婚できるってこと!?」
セスティナが目を輝かせて言っていた。
「だって、ルチア私のこと好きだし、私たちって、相思相愛じゃない!!」
「セスティナってば、今はそれどころじゃないわよ」
「そうだけど」
「それにこれが終わればまた子供に戻ると思うわよ」
「そうだとしても、結婚できるってことでしょ? ね? ね?」
セスティナは周りのみんなに同意を求めたが、みんなは正直それどころではない。
「がんばれ!」
「がんばれー!」
鏡に向かって応援を続けていた。
「元々ルチアが男だったらいいなって思ってたのよ。そのうち大人になれば結婚できる・・・ククク」
「男になるのは今だけかもよ」
母のエキドナは冷静に返していた。
「男になれるんだから頼んだらなってくれるかもしれないでしょ?」
「いつ大人になるかもわからないし」
「どっちみち、しばらく結婚しないからいいもーん」
(まあ、人間の男にうつつを抜かすよりいいかも)
エキドナはそう思い黙っていた。
「がんばって、ダーリン!」
セスティナはかなり盛り上がっていた。
「あのー」
その場にやってきた男がいたが、みんな鏡に目が釘付けだった。
「あのー」
男はもう少し大きな声をかけてみた。エキドナが男に目を向けた。
「あら、ニイニじゃない?」
「え? ニイニ?」
みんながちらっと男を見た。
かなりきれいな顔をした妖精がそこにいた。
「ほんとだ。ニイニだ」
「ニイニも大きくなったんだ!」
ニイニは男らしい男ってわけではなく、ジュリアンのようにきれい系だった。
「え? かわいい。ニイニもいい! でも私にはルチアがいるし……」
セスティナは一人でぼそぼそ言っている。
エキドナは、ガーベラの子供達がみんな大人になったようだとニイニに説明した。
「そうなんですね。ちょっと水の神殿に行って来ます」
ニイニは妹達が気になったのか去って行った。
「ってことは、ユリアナ&イオナちゃんも大人になったのかな」
「レヴァーン様が知ったら騒ぎそうだけど」
レヴァーンはこの場にはいなかった。知っていたら大騒ぎしているはずだ。
「ランスロット様もすごいですよ。かっこいい!」
「技がすごい!」
「キュリアちゃん、すごく美人!」
「新しい女神がきた。あれはだれだ?」
「すごい美人だ!!!」
「ルチアは頼りになるところがいいのよね。やっぱりルチアしかいないわ。ダーリンがんばっ!」
セスティナはいろいろ想像して盛り上がっていたが、周りは無視してそれぞれ応援していたのだった。




