1 でかっ
戦は三日目に突入したようだ。ジンラの神殿にいたアマンザとジンラも落ち着かない様子だった。戦前から空はずっと暗い。雨が降りそうで降らないといった日が続いている。二人は、酒蔵にあるお酒が戦が終わった祝いになることを信じて、新たな酒を造っている。
戦の間はあまり神殿から離れないようにといわれていたので、アマンザもジンラの神殿の周りと畑をうろつくだけだった。
「ああ、みんな無事でいますように」
この神殿にはガーベラのような魔法の鏡はない。戦の様子を見ることもできなかった。人間界の様子もわからない。
「あっちのお母さんのところも無事だといいけど」
じっとしていても心配するだけなので、アマンザは畑を耕したりして時間をつぶしていた。そんなとき、何かが背中にぼすっとあたってきた。
「うん?」
アマンザは振り向いて思わず後ろに尻餅をついていた。
「うおっ……ええ!?」
「グウ~」
後ろにいたのは金色の毛並みの獣だったが、かなり大きかった。しかも背中には金色の翼がある。
「え。この顔、君はリリーかい?」
その顔は豹っぽくもある。豹よりも毛は長めだった。
「グルルルル」
リリーは甘えるようにアマンザのおなかに顔を寄せてきた。
「リリー? ちょっと見ない間に、こんなに大きくなるなんて」
ちょっと前まで、リリーは豹をちょっと小さくしたくらいの体格だった。今では豹を飛び越している。顔だけでもライオネルの顔くらいありそうだ。背中に大人が三人くらい乗れそうである。
「でかっ。すごいよ。リリー」
足も太く、体つきも立派だった。リリーはくるりと体を回した。尻尾の蛇たちも健在である。でかい立派な蛇になっていた。
「シャー」
二匹の蛇はアマンザに何かを訴えるように口を開けていた。
「わかった。お酒だね。すぐに用意するよ!」
アマンザはいつもの小皿ではなく、小樽を持ってきた。
「わっなんだこりゃ!」
ジンラがやってきた。酒を一緒に造っている妖精達もリリーを見驚いている。
「すごい」
「でっかい!」
「これがリリーちゃん?」
リリーは寝そべり、尻尾の蛇たちは小樽に頭を突っ込んでいた。
「リリー」
アマンザはリリーの首に抱きついた。リリーの首には金色の輪がついたままである。一体どういう神器なのか、まだわからない。
「あったかい」
「リリーは戦に出るためにでかくなったのか?」
ジンラの言葉にアマンザはどきりとした。
「リリー、戦に行くのかい?」
リリーはアマンザのほおをぺろっとなめた。
「リリー怪我しないようにね。気をつけるんだよ。無事帰ってくるんだよ」
「グウ」
ジンラはでかくなったリリーの周りを回っていた。
「しかしすごいな。こんなにでかくなるなんて。もう神殿には入れないな」
「そうですね」
蛇たちは顔を上にあげていた。
「全部飲んだのか。すごいな」
ジンラは小樽をのぞいたが、酒は空になっていた。リリーは立ち上がり、ばさっと翼を広げた。
「なんて神々しい生き物なんだ」
リリーはだっと走ると空に舞った。
「あの体で飛ぶとはすごいな」
「無事帰ってくるんだよー!」
アマンザは涙目で見送ったのだった。




