悩むな
「うーん、悩むな……」
神の国である。火の神殿にて、火の神サラディンは悩んでいた。目の前にあるのはクローゼット。中にはサラディンの服が並んでいる。もちろんすべて赤系統である。他の色は一切ない。
「うーんうーん……」
「どうしたの?」
サラディンの娘、ルティアナがやってきた。
「実は、人間に私の服をあげる約束をしたのだが、どれをあげようか迷っているんだ。どれがいいと思う?」
サラディンはルティアナに聞いた。ルティアナは衣装を眺めて、
「どれでも一緒じゃない?」
と言った。
「一緒じゃない。デザインが違うだろう。こっちは袖が少しあり、こっちはない。これは長袖だ」
「たいした違いはないよ」
どれも似たようなローブ状の服である。
「そうか? じゃあどれがいい?」
「お父さんが着ないヤツをあげたら? 全部着てないでしょ?」
「着ていないのを私の服だとあげていいのか?」
「別にいいじゃない。お父さんの服だし」
「うーん……」
サラディンは二十着ほどある服を一つ一つ出して考えていた。これだけあっても気に入ってる服というものがあり、あまり着ていない服もある。服の素材は同じなのだが。ちなみにサラディンの服は火に強い加工がされていて、それはジェラルドじゃないとできない。
「ねえお父さん、たまにはズボンはかない?」
「ズボン」
「違う格好のお父さんがみたいの」
「昔作ってくれたのがあるぞ。ズボン」
サラディンはクローゼットの横にあるタンスの引き出しをあけた。折りたたまれたズボンがそこに入っている。
「はいてみて!」
娘に要求されて、サラディンはズボンに履き替えた。上は赤のチュニックである。
「……なんか違う。お父さんじゃないみたい。でもマントとかつけたらかっこいいかも」
「邪魔だからいい。腰帯はどれをあげようかな」
「腰帯もあげるの? これがいいんじゃない?」
ルティアナは適当に一本取って渡した。腰帯も、赤で似たようなものである。
「火の神様だからって、赤じゃなきゃいけないってことないと思う。たまには青とかどう?」
「いやだ。落ち着かない」
「たまにはいいのに。はい、じゃこれとこれね」
ルティアナは袖がある衣装と腰帯を選んでサラディンに渡し、去って行った。
「……これでいいか」
サラディンはそう口にしたものの、まだ悩んでいるのか他の衣装を見ていたのだった。




