ご褒美だ
神の国にて、神々の戦勝祝賀会のさなか、最高神アシュランより、褒美の話が出た。
「妖精達もよく戦ってくれた。今回誰も欠けなかったのがとてもうれしい。妖精達に今回の褒美を用意した」
グレンが十センチほどの高さの木箱を持ってきた。
木箱の中には金色に光る足がついたゴブレットが十六個並んでいた。
「これは魔法のゴブレットだ。いつでもジンラの酒が飲むことができるんだ」
「おおー!」
と妖精達から歓声があがった。
「これは所有者しか使えない。譲渡もできない。イシュタールの場合は、死んだ時にはこれはただの金の杯になると思っていてくれ」
突然話をふられたイシュタールの目はまん丸である。
「私もいただいてよろしいので?」
「もちろんだ。一人づつ取りに来い」
妖精達は一人一人アシュランからご褒美を受け取った。神々から拍手が起こっている。イシュタールがゴブレットを受け取った時には、感動のあまり泣いてしまった。
ねぼすけは「ジンラ様のお酒が飲み放題なんてすごい!」と喜んでいる。
「お酒はジンラ様の酒蔵と通じているんですか?」
ねぼすけが聞いた。
「そうだ。たまには違う味のお酒が行くかもな」
とジンラ。
「さっそく試してみてもいいですか?」
「ああ」
ねぼすけは杯を持って念じた。すると紫色の液体が注がれた。
「すごい!」
「よかったわね」
ガーベラが横で言った。
「ハロルド、マチルダのもあるんだが」
アシュランがハロルドに言った。
「マチルダがお酒を飲んでいるのを見たことがないな。飲むのかな?」
ハロルドは首をかしげている。
「プータローのはサラディンから渡してくれ」
プータローはこの場に来ていなかった。
「わかった」
「子供達の褒美はどうしよう。何がいいかな?」
アシュランは子供達へは何をあげるか悩んでいた。
「女の子は何を上げたら喜ぶかな?」
アシュランはヒルデリアに聞いた。
「そうですねえ。キュリアなら、楽器か、瞬間移動ができる神器などが喜ぶかと思いますが」
「それは男の子も喜ぶだろうが、ジェラルド、今神器を作ることはできるのかな?」
神器は神々が生まれる時に持っているのもあれば、ジェラルドが作ることもある。
「今はちょっと無理です。道具の石がありませんで」
ジェラルドが答えた。
「そうか。そのうち子供達に聞いてみよう」
後日子供達を褒美の件で雲の上の神殿に呼んだところ、エスメラルダは来なかった。ジュリアンも、「たいして何もしていないので」と断っている。ルチアはまだ寝ているのでここには来ていないし、ランスロットとヴァルは、褒美をもらうには小さすぎるので来なかった。キュリアは新しい楽器がほしいともう要望は伝えていたので来ていない。来たのはジェイク、ソル、ヴォルフの三人である。
「戦に参加した褒美をあげよう。何か欲しいものはあるか?」
アシュランは三人に聞いた。三人は目を合わせている。
「僕、今度人間の姿で人間の世界を見て回りたいです」
ジェイクが一番に言った。
「いいぞ。二人は?」
「僕は……恥ずかしいので後でこっそりいいます」
ヴォルフが言った。
「僕は……何がいいかわかりません。保留でいいですか?」
「ああいいぞ。落ち着いたら、聖地にソルの神殿を作りたいと思っているんだ。ルチアのも作りたいんだが、ルチアのは『終日の神殿』になるのかな?」
「僕、ルチアの隣がいいです。なんなら一緒の神殿でもいいし」
「そうか。お前達は仲がいいな。場所はまたそのうち考えよう」
「はい」
ジェイクとソルは去って行った。ヴォルフはアシュランと二人きりになった。
「僕のご褒美は、あっちのお母さんにあげてください」
ヴォルフが言った。
「王妃のことか? 王妃へは、何かするつもりだぞ?」
「じゃあ二つあげてください」
「そうか。わかった」
アシュランはあっさりと了承した。
「ではこれで」
ヴォルフは去って行った。
「王妃は慕われてるなあ」
アシュランはぼそりと言っていた。
裏ではグレンが「さすがガーベラ様だ」などと言っているのが聞こえてきた。
アシュランはイシュタールにも、ゆりが寄付してくれた魔道具のことを聞いていた。
「実は王にも内緒でくださったんです。私とロイ様とバートランド様にだけ渡して、残りはすべて神の国の戦士達に使ってほしいとおっしゃって」
(王妃という存在は、一族を最優先しなければならないものなのに、バートランドにもあれを渡してくれたんだな。王妃の功績はでかいが、王にもなにかしとくか。魔道具のことをもし王が知って王妃が責められたらかわいそうだし)
王に何か贈り物をしておけば、そのことがばれたとしても、王は怒らないだろうとアシュランは思った。
「そういえば、私は魔石を持ってたな。どんなのを持っていたっけ? ちょっと見てみよう」
アシュランは広間から出て行った。一体どんな贈り物になるのか。後日のお楽しみである。




