ねむい
「があああああ」
「があああああ」
(一体何の声だろう?)
「があああああ」
低い獣のうなり声のような声が響いている。
獣がうなっている声だろうか?
とヴォルフは思った。ここはオルガの神殿の入り口である。
「ぐあああああ」
その音がする方につい行ってみる。オルガの神殿の広間は薄暗かった。誰もいなかったのでヴォルフはそのまま中に入った。奥に部屋は5つほど並んでいて、左から3つめの部屋からその音は聞こえてきた。扉はなく布がかかっているだけなので、神殿の外まで音が聞こえたのだろう。
「ぐあああああ」
ヴォルフは布をちょっとあげて部屋のなかをのぞいてみた。
(嘘だろう!?)
ベッドにいたのはルチアである。ルチアは布団を蹴飛ばし手足を広げて上を向いて寝ていた。
「がああああああ」
どう見ても声を発していたのはルチアだった。まさかあの少女が、あんな大人の男も顔負けのいびきを発していたとは。
「がああああああ」
(見てはいけないものを見てしまった気分だ)
「戦が終わってからずっと寝ているんだ」
後ろから声がかかった。振り向くと、オルガがいた。
「あーえーと、あの、ルチアが気になって……」
「ああ、ヴォルフも大活躍だったな。ルチアはかなりの力を使ったからな。かなり疲れているんだろう。今は回復中なんだろうな」
二人が話している間にもルチアのいびきが響いていたので、声が聞き取りづらかった。
「ルチアがこんなにも神殿にずっといるのは珍しい。しかもこのいびき、かわいい」
「がああああああ」
「かわいい……?」
まるで獣のうなり声のようだがオルガにはかわいく聞こえるようだ。これが親馬鹿というやつかもしれない。
「また来ます」
「ああ」
ヴォルフは去って行った。
(そういえば、コウモリ達はいなかったな)
七色のコウモリ達は、ルチアのいびきがうるさかったのでラーズの神殿に避難していたのだった。




