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6.閑話 チルル2

 ――チルル。

 レインハルト様は「平等」と言ってくれた! 言ってくれたの!

 嬉しかった。何よりもレインハルト様から出た言葉だったことが。

 あたちは獣人。だけど、レインハルト様にとっては人間も獣人も同じ。

 それどころか、レインハルト様はエルフなのでエルフは当然として、まさか、魔人や竜人まで同じと言ってくださるなんて感動して涙が出ちゃった。

 あたちは魔人と竜人を見たことがないけれど、エルフと同じでどちらの種族も誰もが魔法を使うことができる種族なんだ。数はとっても少なくて、どちらも一つの街だけに住んでいるんだって。

 魔人は海の底に。竜神はなんと空の上なんだよ! 

 空の上に島があってそこに竜人の街があるの。一度だけでも行ってみたいなあ。

 

 獣人と人間は人間の方が少しだけ数が多いのだけど、どの街でも下に見られているの。帝国は魔法を使える者を優遇するから。

 だから、レインハルト様もそう見ているんだってどこか思ってた。

 だけど、レインハルト様は違ったの! あたちを哀れな獣人だから置いてやっているんじゃなくて、あたちを対等な仲間だと思ってくれている。

 日替わりメニューの提案をしたら、レインハルト様が即採用してくれたのが何よりの証拠だよ。

 彼はあたちの意見も聞いてくれる。

 誰も何も言わないけど、レインハルト様っておとぎ話に出てくるような大魔法使い並……ううん、それ以上なお方。

 そんなお方に認めてもらえるなんて……嬉しかった。

 両親が死んで以来、生きてきて誰にも必要とされなかったあたちにとってはこれ以上ないほどに。

 そこまで考えてようやく気が付いたの。

 レインハルト様が偉大な魔法使いで必要とされたから嬉しかったんじゃない。彼が同じ獣人でも、魔法が使えなくたって、レインハルト様が、両親以外の誰かが、あたちを必要としてくれた。

 あたちにとってそれが何よりも嬉しかったんだって。

 

 ◇◇◇

 

 レインハルト様が日替わりメニューを作ると言ってくださった後、あたちは遠慮せず、次の質問を投げかけた。

「レインハルト様。日替わりメニューはいつからはじめるんですか?」

「明日からだ」

「え。ええ!? これからいつもの仕込みですよね?」

「至高のカレーに手抜かりはない。明日の昼までもあるから余裕だ」

 で、でも。どんなメニューにするとか、そもそも材料はどうしたら?

 そういえば、レインハルト様のカレーライスは色んな素材を使っているの。

 だけど、いつの間にか全ての材料が奥の倉庫に収められていたんだ。

 一体どうやって? 魔法で作ったりしているのかな?

 

「まずは、チルルにとっての至高のカレーを作ろうじゃないか」

「あたちからなんですます!?」

「そうだとも。味見をしてもらいたい」

「ど、どんなカレールーなのですか?」

 そうだな、とレインハルト様が形のいい顎に手を当てる。

「ふうむ。パイナップルやココナッツがいいと思うのだが、どうだ?」

「どちらも聞いたことのない名前です……」

 自分の無知は今に始まったことじゃない。

 だけど、知らないことは知らないと言えるようになっただけ、あたちだって成長したんだもん。

 レインハルト様は知らない、と言ったところで決して怒ったりしない。逆に、丁寧に説明してくれるんだから。

「持ってくるか」

「あ、あの。レインハルト様」

「ん? なんだ?」

「あたちもついて行ってもいいですか?」

「おお。そいつは効率がいい。その場で味見し、不要なら持って帰ってこなくて済むからな。素晴らしいアイデアだ。チルル。カレールー作りは一刻も早く開始したい君の想い確かに受け取った」

 なにやら早口になるレインハルト様だった。

 で、でも、秀麗な彼の顔をのんびり眺めていられたのはここまでだったんだ。


 唐突に立ち上がった彼は、あたちの手を引き自信満々に言い放つ。 

「行くぞ」

「ひゃああ」


 転移魔法で知らない土地に来たの。どこだろう、ここ。

 いやに雲が近いような。

「こいつがヤシの木だ。こっちがパイナップル。色々試したのだがどういうわけか、空高くでしか育たなくてな」

「レインハルト様がお世話されてるんですか?」

「俺はしていない。こいつらがやってくれる」

 小さなゴーレムたちが、ちょこちょこ動いてる! 

 レインハルト様が砦跡の改装をした時とは形が異なるものだったよ。

 

 ほへえと、可愛らしいゴーレムたちを見ていたら、いつの間にかふらふらと数歩進んでいたみたい。

 するとレインハルト様があたちの腕を掴む。

「おっと、あまり動くな。その先は空の下だ」

「え、ええ。空の上にあるんですます!?」

「そうだぞ。さっき言った通りだ。空高くでしか生育しないのだ」

「はへえ……」

 絶句。

 まさか竜人たちと同じ空の上にある島に今いるなんて。

 一度行ってみたいと願っていたけど、こんな形で叶うなんて思ってもみなかった!

 

 その後、二人で味見して、パイナップルを採用することになったんだ。

 完成したパイナップルカレーは、パイナップルの実をくり抜いてカレールーとライスを入れたもの。

 パインからの甘味と酸味が出て、とってもおいしかった。

 明日から出す日替わりの初回はパイナップルカレーになったんだよ!

 日替わりメニューを食べたお客さんの反応が楽しみ。この味なら、レインハルト様もきっとお客さんの反応を見て喜んでくれるに違いないんだから。

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― 新着の感想 ―
何ィ、隠し味にリンゴとココナッツを入れんじゃないのか!?(ハチミツも) 旨さリンゴとココナッツだろう!(←バーモント脳)
パイナップルをくり抜き器に使うなんて、究極の贅沢カレー! 飯テロが過ぎる…。
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