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44.肉祭り

《本日は肉祭り。お好きなお肉をどうぞ》

 リョウの提案で、日替わりの代わりに五種類のカツを提供するお試し会とした。

 どのカツが一番カレーに合っていたか、各自投票を行い、感想をくれる者には感想をもらうお試しの会のようにした。

 俺の研究のために店を使い、食べてもらうため、今日のお代は無料としたのだ。

 ただ、前述の通り、一番気に入ったカツへ投票をしてもらう。もちろん、投票をすることは強制しない。どれも至高ではないケースもあるだろうからな。

 俺個人の感想として、そもそもカレーにカツは邪道であるし、投票するとしたら「カツを入れない」になる。

 俺と同じような考えの者もいるはず。なので、無投票もありとしたのだ。

 

「カツ総選挙ですます!」

 いつもの店と様子が違うことに驚いた様子の獣人兵士だったが、カツ総選挙とは何かの説明を受け、歓声をあげる。

「それぞれ一口サイズに切り分けることもできます! 肉の種類はここに書いてある通りです。ご自由に注文してくださいね!」

 チルルが五種類のカレーについて説明を行い、続いて、今日の代金についても声を張り上げ皆に聞かせた。

「今日は無料での提供となります! みなさん振るって投票してくだ……っつ……くだしゃいます」

 噛んだ。

 一息に喋ろうとして、舌が回らなくなってしまったのだろう。 

 カツに合わせるカレールーは極上カレー。小皿に五種のカツカレーを用意してそれぞれ食べてもらう。足りない者はおかわりしてもらうことにした。ちょっとばかし、チルルの説明と異なるが、そこはご愛敬ということで勘弁してもらいたい。

 俺たちにとっては初の試みだからな。

 多少たどたどしくても仕方ないことだ。

「カツ総選挙。開幕だ!」

 獣人兵の一人が叫ぶと、他の獣人客がわあああと歓声をあげる。

 こうして、カツ総選挙が開幕した。

 

「うめえ!」

「こんなにお肉が食べられるなんて」

 食べ終わった獣人客が次々に票を投じて行く。

 票は選挙のように名前を書いて入れるものではなく、肉の絵柄が描かれた箱へ白紙を入れるスタイルとした。

 肉の種類は五種類だし、書くよりそのまま箱へ投じる方が早く済む。

 注目の第一ラウンド獣人客の投票結果は、ポーク優勢。次にビーフ、続いてチキン。ベアに、草食竜の順だった。

 

 獣人客が減ってきて、入れ替わるようにして人間の客が来店し始める。

「今日はカツ総選挙ですます!」

 チルルが本日二度目の総選挙宣言を行った。

 なんだ、なんだと人間客も興味津々の様子だ。

「やあ、チルルちゃん」

「いらっしゃいませ!」

 陽気に挨拶をしたのは最初の客にして常連のダインだった。彼の相棒ガレスもチルルに向け小さく手をあげ会釈をする。

「なんだ。なんだ。今日は祭りの日なのか」

「はい! 今日はカツ総選挙ですます」

「総選挙? 何やら聞いたことのない言葉であります!」

「箱が並んでいるわね」

 少し遅れて入ったきたリズにセレナが言葉を重ねた。

「全部二皿持ってきてくれー」

「同じく」

 席に座ったダインとガレスが早速注文をする。余り量を食べないリズも五種類を一皿づつ頼んでいた。


「待ってましたー。では早速」

「お。うまい」

「俺はこっちから行くぜ」

「うまい」

 ダインとガレスは手を止めることなく、全てを食べ尽くす。

 対するリズとセレナはゆっくりとラッシーを飲みながら、味わって食べていた。

「どれか一つを選ぶなんて厳しいな。店主。投票数を増やせないのか?」

「構わんが」

 至高がいくつあっても構わない。十人十色だ。誰しも至高が一品だけである必要性もないからな。

「なら俺は全部に入れる!」

「それじゃあ、選挙にならんだろ」

 よっしゃあと腕を上げるダインにあきれ顔のガレスであった。

「この肉は初めて食べたであります」

「これはベアと書いてあるわね」

「草食竜はチキンよりあっさり味でありますね。こちらも初めて食べました」

「草食竜は海の向こうの大陸で育てられているのよ。牛くらいの体の大きさなんだって」

 珍しくいつもは解説役のリズと聞き役のセレナの立場が逆転している。

 食べ物に関してはセレナの方が詳しいのかもしれんな。


「途中集計でましたー」

「ふむ」

 店が落ち着いてきた頃、チルルが人間客の投票を数えてくれた。

 こちらはビーフ優勢。次にチキンでポーク。

 案外差がでたな。

 十人十色はやはり面白い。正解がないというのが良いぞ。いつまでも研究ができる。

 

 最後は獣人とドワーフ客の来店だ。

「総選挙。面白そうだな。全て三皿くれ」

「あたしも同じく」

 鬼族のギルとミズチから大量注文が入る。

 彼らが一際大食いというわけではなく、鬼族は人間に比べ大食漢であることが多い。

 平均すると一番小食なのが人間とドワーフで、次が獣人、一番食べるのが鬼族だな。

 とはいえ、人間の食事量が少ないと言っても、彼らは兵士である。一般の人間に比べれば女性でも良く食べるのだ。

 リズくらいが本来の人間の平均くらいだと見積もっている。彼女はカレーライスのライスを通常より減らした量で満腹になるくらいだな。セレナは通常サイズのカレーライス一皿で満腹と言った感じである。

 一方で、鬼族のミヅチは最低二皿は食べるのだ。これは、人間でよく食べる方のダインやガレスと同じくらいの量になる。

「鬼族とドワーフの方の集計がでましたです!」 

 鬼族はポーク優勢だが、ほぼ同数でビーフ。続いてチキンという結果となった。


 片付けが終わり、一息つく。

「集計終わりましたですます」

「ううむ。人気を測るアイデアは良かったが、至高かどうかは分からんな」

 リョウの意見に従うまま総選挙をやってみたが、出された中でのお気に入りは分かるが、至高かどうかは分からない。

 得票結果はポークの優勝。僅差でビーフ。離れてチキンだった。ベアと草食竜は得票数が少ない。

 兵士など体を動かすことを生業にしている者たちなので、ガツンとスタミナ系の方が好まれた結果なのかもしれないな。

 

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