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23.閑話 チルル3

Side チルル

 な、なんと! レインハルト様に海底都市に連れて来てもらっちゃいました!

 まず最初に目に飛び込んだのが空だったの。

 空が明るいんだけど、空の向こう側があって空の青と違って深い海の青!

 雲がない代わりに水が動いてうねって見えるんだ。

 もうずっと海底都市の空を眺めていられるくらい!

 この日はレンガ作りのお家をちらっと見ただけだったの。少し残念だったけど、明日また来ることになったから逆に嬉しかったかも。

 レンガ作りのお家は街のお家と似た作りだったけど、色が違うの。

 街のレンガはオレンジとか赤茶色が殆ど。でも、海底都市のレンガは薄青色や薄紫で海の下という雰囲気でとっても素敵。

 赤茶色も可愛くて好きだよ。だけど、街での生活にいい思い出がないから……。

 

 ◇◇◇

 

 昨日はドキドキしてなかなか寝れずに、レインハルト様に起こしてもらっちゃった。

「疲れているのなら、俺だけで行ってくるぞ。休みは休むとリョウも言っていたからな」

「そんなことありません! 海底都市に行くのが楽しみ過ぎて」

「そんなものか。俺もカレールーを研究している時はなかなか寝付けないことがある」

「それと同じですます」

 レインハルト様と手をつないで、いざ、海底都市に。

 

 ふわりと体が落ちて行くような感覚と共に視界が急に切り替わる。

 転移は何度体験しても慣れないよ。だけど、急に切り替わった視界でそんなの全部吹き飛んじゃう。

 

「やあ。時間ピッタリじゃないか」

「当然だ。何事をするにも時間を無駄にしてはいけない」

「出たよ。カレー脳」

「カレーがあるのか?」

 ないない、とリョウさんが右手をしっしとする。

 レインハルト様はカレーとなると目の色が変わるの。本当にカレーが好きだからこそ、いつも真剣なんだ。

 あたちもレインハルト様の素敵なカレーを広めるため、頑張っちゃうんだから。


 向かった先は海底都市一番の市場!

 露店が立ち並び、色んなものが売っている。

 特に目を惹いたのは鮮魚店かな? 見たことのない鮮やかな色をした魚が所せましと並んでいたの。

 レインハルト様は魚を見て、ふむ、と形のよい顎に手を当ていくつか購入していた。

 他にも海産物を買っていたかも。綺麗な貝も多いんだね。

 そんな貝殻を磨いてアクセサリーにしたものもあり、じーっと見つめたいたり、と見ているだけでも楽しい。

 そんな時、目線の先にある薄紫の巻貝を磨いたネックレスをひょいっとレインハルト様が手に取ったの。

「これも頼む」

 食材にネックレスを加え購入したレインハルト様が、無言であたちにネックレスをくれたんだ!

「あたちに?」

「ついでだ。ついで。必要なければ店に飾ればいい」

「そんなことありませんですます!」

「次に行くぞ」

 踵を返したレインハルト様についていきながら、ネックレスを頭から通す。

 それだけで、頭がポヤポヤしてきてついつい笑顔になっちゃった。 

 レインハルト様。ずっと大事にしますね!


「こいつも買っておくか」

「カメ……ですか?」

「ウミガメだな。悪くはないが、よい出汁が出るかは考えどころだ」

「そうなのですね」

 使わなそうならば、甲羅を飾るか、とかレインハルト様が言っていた。

 ぐうう。

 その時、あたちのお腹が盛大に悲鳴をあげる。

「そろそろ、食事にする。たまには違うものを食べるか?」

「はい!」

 また涙が出そうになっちゃった。

 鈍いあたちでもレインハルト様の意図くらいわかるよ。レインハルト様は何よりもカレーライスが好き。

 いつどんな時でもカレーライスを食べる人なの。

 だけど、あたちに気を遣って他のものを食べよう、って言ってくれた。

 

「それならいい店があるよ」

 後ろでレインハルト様の買い物を眺めていたリョウさんについて行く。

 

 リョウさんが案内してくれた店は、天上が高くて窓がいっぱいあるおしゃれなお店だった。

 何を頼むのか迷ったけど、シーフードグラタンにまるいパンを頼んだの。

 まるいパンにグラタンソースをつけて食べると、幸せ。

「ほう。パンが好きなのか?」

「ライスも好きです! 一度柔らかいパンを食べてみたかったんです」

「ふむ。リョウ、パンの方が一般的なんだよな?」

「んだな。いろんなところを旅したが、米を出すところは一か所だけだったな」

 あたちもカレーライスを食べるまでは、お米を食べたことがなかったよ。

 興が乗ったのか、リョウさんが食べ物談義を続ける。

「ラーメンやうどんも見たことがないな。どこかでラーメンが食べられると思ったんだが、残念ながら」

「ないなら作ればいいだろ」

「いやいや、普通無理だって。カレーライスを食べられただけでも奇跡だよ」

「いつでも食べに来ると良い。至高のカレーライスを作って待っているからな」

 でたよ、カレー脳、とリョウさんが自分の額に手を当てぼやく。

 

 ◇◇◇

 

「楽しかったなあ」 

 湯船につかり、今日あったことを思い出しながらんーっと両手を伸ばす。

 あたちの動きに合わせて、首からさげた薄紫の巻貝も僅かに動く。

 巻貝を手にとり、見つめると、自然と頬が緩む。

「ありがとうございます。レインハルト様」

 そう言ってから、湯船から出る。

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