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22.来たぞ、海底都市

 その日の営業後、リョウとヴェルネーゼが帰宅することになった。

「長居してすまなかった。挨拶してから帰ろうと思ってさ」

「ほんとうに快適でしたわ。魔人の貴族でもこれほど快適な生活をしている方はいらっしゃらないですの」

「いつ帰ってくれても構わんぞ。リョウたちなら歓迎だ」

 リョウとヴェルネーゼは次から次によい研究アイデアをもたらしてくれる。

 カレーライスもおいしいと食べてくれる(ここだけ大事。他は副次的)からな。

 

「海底都市まで帰るのか?」

「旅してたんだけど、ヴェルネーゼに捕まったし、一回帰ろうかなって」

「あなたが何も言わずに飛び出しちゃったんでしょ」

 二人の剣呑とした様子にチルルがあわあわとしていたら、お互いにバツが悪くなり空気が和らぐ。

 彼らには彼らの事由があるのだろうが、正直興味はない。カレーに関することなら何としても聞きだすのだがな。

 

 帰る先が海底都市なら、問題ない。 

「海底都市まで送って行こうか?」

「送る?」

「海底都市なら一度行ったことがある。問題ない」

「あ、あの。レインハルトさん、送るとは、どういうことですの?」

 戸惑った様子のヴェルネーゼだったが、戸惑う要素なんてあったか?

 送るといえば、転移で送るに決まってるだろうに。

 空を飛んでいくと時間がかかって仕方ないだろう。

「あ、あの。レインハルト様は転移魔法でお二人をお届けするとおっしゃっているです」

 チルルがフォローする。

「な、なんだってえええ」

 リョウがビックらして尻もちをつく。ヴェルネーゼは逆に荒唐無稽過ぎて信じてない様子。

「行くぞ。チルルも来るか?」

「はい!」

 リョウとヴェルネーゼに手をつないでもらって、レインハルトはチルルとリョウと手をつなぐ。

 ほい、転移。

 

 ◇◇◇


「マ、マジかよ」

「転移魔法なんて神話で聞くだけで、本当にあるなんて……」

 一応、人通りのない路地を選んだから、誰にも見られていないはずだ。

 見られても別に構わんのだが、これには理由がある。

 転移先に人がいたら、弾き飛ばしてしまうのだよ。その威力は凄まじく、下手したらミンチになるほど。


「空が変です」

 ふわあ、チルルが感嘆した声を出す。

 今は朝の時間帯なので、上空はぼんやりと光り、光の先は青色が見える。

 日光と異なり、直視しても目が焼かれることがなく……そうだな、曇り空を眺めているような光量か。

 そんなチルルに対し、ヴェルネーゼが優し気に説明を始める。

 リョウに対してはあれほど辛いのに、普段の彼女はこんな感じなのだろう。

「チルルさん。海底都市は泡のような膜の中にあるの」

「空は膜? なのですか?」

「ご先祖様が開発した魔道具で泡を作って固定し、そこに街を作ったの。膜が光るのもその時からよ」

「夜でも明るいと変な気持ちになっちゃいますです」

 夜になると暗くなるの、とヴェルネーゼが補足する。

 

「膜以外は他の街とそう変わらないさ」

 頭の後ろに腕をやりつつ、リョウがくるりと首を回す。

 確かにリョウの言う通り、建物はレンガ作り、路地も同じくだ。モニュメント的な建物は貝殻を模したものなどもあった記憶だが、人の街と比べて街並みが特殊というわけでもない。

「以前一度だけ、海底都市に立ち寄ったことがあってな。しかし、まるで見て回っていない。リョウ、海底都市の食材やら酒やらを紹介してもらえるか?」

「もちろんさ。金のことは心配しなくていいよ」

「私にも案内させてください」

 海底都市の通貨を持っていない俺たちのことを察してか、これまでの礼と全てリョウとヴェルネーゼが路銀を出してくれることになった。

 しかし、既に時間が遅く市場がしまっているので、翌日またここで落ち合うことになる。 

 

「すっかり遅くなってしまったな」

「いえ、とっても楽しかったです」

 戻った俺たちは各々別れ自由行動となった。

 

「ふう……山積みなのが……とてもよい」 

 俺はと言えば、これから何をすべきかとロッキングチェアへ深く腰掛け思考にふける。

 考えるのはもちろんカレーのこと。

 スープカレーはこれまで作ってきたカレールーと構成が大きく異なるのだ。

 ライスとカレールーであるものの、カレールーがドロッとしておらず、コーンスープのようにサラサラと飲める。

 リョウの表現を借りるとカレーは飲み物を地で行くのがスープカレーである。

 

「付け合わせやサラダ、それに酒もあるか」

 研究対象が多量にあるって何て素敵なことなんだ。

 自然と目がギラギラなり、やる気にふつふつと湧いてくる。これぞ、カレー効果。素晴らしい。

 

「明日は海底都市の散策だったな。海底都市で使っている独特の食材も助けになるかもしれん」

 そこへ風呂からあがったチルルがやってきた。

「レインハルト様。海底都市に連れて行ってくださりありがとうございます」

「変わった都市だったよな」

「はい! おとぎ話のようで、もう感動です。魔人の方もあたちを見ても特に何か言ってくるわけじゃありませんでしたし、魔人の方って怖い方が多いと思っていたので意外でした」

「リョウたちの計らいもあったからだろう」

 そもそも、海底都市まで獣人やエルフが来ることがない。

 魔人たちからは変化の魔法でも使ってると勘違いされただけなのだろうが、言わぬが花というものだろう。

「俺も風呂に入ってくる。明日は朝から出かけるぞ」

「はい!」

 さて、どんな食材が待っているか、楽しみだ。

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