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埋まる前の席

第二話では、先輩の背中を見てきた「俺」の視点から、空白が生まれる前の揺らぎを描きます。

誰もが一度は通る「気づく前の時間」を、少しだけ覗いていただければ嬉しいです。

昼休みになると、俺は競馬新聞を広げる。


赤ペンで印をつけ、オッズを眺めていると、


頭の中が少し静かになる。


「今日は勝てる気がします」


そう言うのが癖だった。


先輩は「ギャンブルで家は建たないぞ」と言う。


怒りもしないし、笑い話にもならない。


事実をそのまま置く言い方だった。


俺は「ですよね」と返す。


それ以上は考えない。


月曜の朝、財布が薄かった。


土日で十三万。


中古の自転車と甥の誕生日プレゼントを買っても、


まだ余る額だ。


昼休み、先輩の机に古いアルバムが置かれていた。


開いたページに、写真枠が二つ並んでいる。


どちらも、貼られていない。


俺は新聞を畳み、何も言わなかった。


週末、実家に帰った。


公園で姉の子どもと遊ぶ。


少し離れたベンチでは、


スマートフォンを見る父親と、その隣に小さな子がいた。


呼ばれても、父親は顔を上げない。


十三万という数字が、頭をよぎった。


月曜の昼休み。


「今日は勝てる気がします」


そう言いかけて、言葉が止まる。


競馬新聞を、静かに畳んだ。


先輩は何も言わない。


十三万は戻らない。


それでも、


あの空白のページのことを考えるようになった。

第二話は、主人公がまだ“失う前”に立っている物語でした。

人は、失ってから気づくことが多いけれど、彼は少しだけ早く気づけたのかもしれません。

読んでくださり、ありがとうございます。

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