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第三話 撮られなかった一枚

アルバムに残された空白は、誰のためのものだったのか。

第三話では、娘の視点からその答えに触れていきます。

淡々とした記憶の中に、確かに存在した時間を探す物語です。

引っ越しの荷造りをしていると、段ボールの底から

一冊のアルバムが出てきた。

床に座り、表紙の埃を払って開く。 遠足、運動会、夏休み。

どれも覚えているが、色は少し褪せている。

写真の中の私はいつも笑っていて、誰かの隣に立っている。

ページをめくっていくうちに、ある違和感に気づいた。

どの写真も、カメラを向けているのは母だ。

父の姿は、一度も現れない。


あるページで手が止まった。 そこには写真がなく、

台紙に四隅の跡だけが残っている。 アルバムを傾けると、

隙間から古ぼけた写真がひらりと落ちた。

逆光の中、公園のベンチで、男と子供が並んで座っている。

二人の顔は影になって見えない。けれど、その隣には、

食べかけのソフトクリームが二つ、溶けかかったまま写っていた。


裏を見ても、日付も場所も書かれていない。

私はその写真を、空白のページに合わせてみた。

角はぴったりと合う。けれど、どうしてもそれをそこに

貼り直す気にはなれなかった。

この一枚は、きっとここに貼られなかったからこそ、

意味があるのだ。


私は写真を財布に収め、アルバムを閉じた。

パチン、と乾いた音がした。 段ボールの蓋を閉じ、

ガムテープで封をする。 窓の外では、

新しい季節の風が吹いていた。



貼られなかった写真は、ただの一枚の紙切れかもしれません。

けれど、そこに込められた思いは、時間が経っても消えないことがあります。

三話の物語が、読んでくださった方のどこかに静かに残れば、それだけで十分です。

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