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我ら復讐代行部!  作者: やばくない奴
蒼木由依編
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訃報

 あれから、宏太(こうた)はずっと由依(ゆい)のアカウントを監視し続けていた。由依は錠剤の写真や精神由来の症状ばかりを投稿するようになり、彼女が滅入っていることは素人目で見ても明らかだった。

「積極的安楽死が合法化されたら良いのに」

「悪意や病理がはびこる現代日本において、出生は純然たる悪。子供を作ること自体が最大の虐待だ」

「生きてるだけで丸儲けって言葉、大嫌い。強者が弱者の痛みを矮小化しているだけなのが、透けて見えるから」

 おおよそ、彼女の投稿群は健康な内容をしていない。して、そのリプライ欄には、数多の反出生主義者が集まっている。

「同感です。私もいじめを受け、不登校になり、今は無職のアラサーですが、低能で無責任な両親のせいで今の私がいます」

「こんなに苦しんでいる人がいるのに、ナタリストは何も現実が見えていない。生まれ方を選ぶことはできないし、生まれる環境を選ぶこともできない。全部が全部、出生を美徳とする歪んだ世界が悪い」

「裕福で容姿端麗な健常者以外は子供を作ってはいけない。その理由の全てがここにある。反出生主義に反対しながら弱者のラベルを冷笑する連中の存在が、より一層反出生主義の正当性を担保している」

――多かれ少なかれ、彼らの存在は今の由依に悪影響を及ぼしているだろう。


 潤也(じゅんや)は語る。

「お、とうとうエコーチェンバーの渦に呑まれたか。ネットに負の感情を垂れ流す奴らは、大体反出生主義か積極的安楽死の話を好むようになる。己の弱さの大義名分を得た連中は、無自覚に互いを扇動し続け、より強烈な思想に染まっていくんだよ」

 それが彼の計算通りだったのか、はたまた副産物なのか――それは定かなことではない。ただ一つ言えることは、今の由依が極めて危険な状態にあるということだけだ。それでも宏太は、依然としていつものスタンスを崩さない。

「なるほどね。実に興味深いよ。やっぱり、ドキュメンタリーほど面白いものはこの世にない。畢竟、人間社会は僕のナショジオだ」

 そう語った彼は、どことなく冷たい微笑みを浮かべていた。



 由依が転校してから、一ヶ月が経過した。復讐代行部の三人は、放課後の空き教室に集合した。そして宏太が彼女のSNSアカウントを見た時、そこには衝撃的な投稿があった。

「この書き込みは予約投稿です。当アカウントの所有者は、先日亡くなりました」

 元より、由依は明確な希死念慮を抱いていた。そんな彼女が自殺を匂わせたことは、極めて重大なことだ。彼がリプライ欄を漁れば、そこには心無い暴言の数々が書き込まれている。

「ざまあ」

「男に股開いて金稼ぎしてた女が自殺しても、なんの悲劇性もなくて面白い」

「よっしゃ! また一人目障りな弱者が死んだ!」

 インターネットは悪意の温床だ。匿名性に守られた者たちは、普段自らが現実で要されるような品性を必要としていない。もっとも、その品性を現実ですら守らない人物はここにいる。

「ぎゃはははは! 宏太! 絵里(えり)! 叶ったよ、俺の夢が!」

――藤谷潤也(ふじたにじゅんや)だ。復讐代行で自殺者を出す夢が果たされ、彼は狂喜乱舞している。その傍らでは、絵里も満面の笑みを浮かべている。

「悪い奴が死んでせいせいしたよ。あんな奴、本来なら死刑が妥当だもん! 次は、潤也が死んだ方が良いよ」

「は? ライン越えだろ」

「パンチラインだからね、ラインを殴り壊しもするよ」

 その切り返しは、いつぞやの仕返しだった。思わぬカウンターを受け、潤也は笑う。

「ははは! 見事だよ、絵里! 俺はお前のことをナメ腐っていたけど、お前も言うようになったじゃないか!」

「ふふん。あーしだって復讐代行部だもん。ただ口うるさいだけの女じゃないよ」

「ああ、そうだな。認めてやるよ。宏太も、お前も、頼れる仲間だ」

 この時になり、彼は初めて絵里を認めた。

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