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我ら復讐代行部!  作者: やばくない奴
二人の巨悪編
25/49

無反省

 翌朝、宏太(こうた)師走(しわす)に、例の録音データを手渡した。

蒼木由依(あおきゆい)には気をつけろ。オレの犯行も、アイツの指示によるものだ」

 大きな黒幕の存在を匂わせる一言は、彼らに強い警戒心を植え付けるものであった。

「しかし、あのいい子ちゃんに何が出来るのか……かぁ。やれやれ、ボクもだいぶナメられているみたいだね。まぁ、事実だから仕方ないか」

 そう呟いた師走は、自嘲的な微笑みを浮かべるばかりであった。そんな彼を励ますのは、宏太だ。

「君は君のルールの中で最善を尽くしている。潤也(じゅんや)絵里(えり)はそれを甘いと言うかも知れないけど、僕は君を買うよ」

「ありがとう。色々、すまないな」

「構わないよ。一応、録音データは復讐代行部の中でも共有済みだ。復讐代行を実行するかどうかは、萩田(はぎた)次第だけどね」

 いつでも動けるよう、あらかじめ対策を講じる――あまりにも宏太らしく、用意周到であった。

「では、ボクは先生と話をつけて、衛宮(えみや)を生徒指導室に呼び出すようにしておくよ」

 そう告げた師走は、昇降口を後にした。



 その後、生徒指導室では衛宮が呼び出されていた。

「はいはい、金返せば良いんでしょ?」

 まるで反省の色がない。やはり人間は、そう簡単には改心できないのだろう。

「衛宮。君は窃盗罪を犯したんだ。これは民事案件などではない。外部に知れたら、普通に処分の下るような行いなんだぞ」

「反省してまーす」

「全く、君たちはいつもそうだ。復讐代行部の影は恐れるわりに、国家権力を甘く見ている節がある」

「いやいや、皆やってることですよ」

「皆がやっていたとしても、これは大きな問題だ」

 担任教師は必死に説得を試みたが、衛宮はまるで動じなかった。皮肉にも、校内唯一の抑止力は私刑だけであった。



 その日の昼休み、宏太は萩田を空き教室に連行した。当然ながら萩田は復讐代行を依頼することに消極的である。

「宏太。おれ、もう嫌なんだ。おれのせいで他人の人生が狂うのは、とても見ていられない」

 それはあまりにも切実な想いだった。さりとて、衛宮は全く反省していない。少なくとも宏太たちは、あの男には報復が必要だと考えている。


 絵里は言う。

「やり返さないと、足元を見られるよ」

 無論、そんなことは萩田自身も痛感している。このまま何のアクションも起こさなければ、同じことが繰り返されるだけだろう。それでも萩田はこう語る。

「それはわかってる。それでも、おれは間違えたくない。道を踏み違えたくない。一度復讐に味を占めたら、戻れなくなる気がするんだ」

 復讐に取り憑かれることは、醜い――それはごく普遍的な美学だ。ましてや復讐代行部が過激な手段を好むとあっては、尚更のことである。一方で、復讐を正当だと考える者もいる。

「他の生徒だけが復讐代行を使えば、あんただけが恰好の餌食になるんだよ?」

 絵里はそう告げた。この時、萩田の脳内では、南岬原高(みなみみさきはらこう)での日々が反芻されていた。デスクの天板に書き殴られた罵詈雑言、そして金銭的な実害――それらはあくまでも過去のことであり、対策を講じない限りはこれからも続く出来事だ。


 数分ほど考え込んだのち、萩田は口を開く。

「復讐代行、お願いしても良いかな」

 結局のところ、彼もまた人間だ。その上、彼はまだ年端もいかない少年なのだ。そんな彼の眼前で、潤也はにやりと笑う。

「任せておけ、とっておきのスーパープレイを見せてやるよ」

 すでに作戦を考えてあったのか、その顔つきは高揚感を滲ませていた。されど、萩田にはまだ良心がある。

「その、今回の復讐なんだけど……もっと穏便というか、マイルドなやり方にできないかな?」

「えー、なんだそれ、つまらねぇな。まぁ、依頼人のお前がそう言うなら、穏便に済む手段を選んでやるよ」

「あ、ああ。ありがとう」

 こうしてまた一件、復讐代行の依頼が受理された。

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