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我ら復讐代行部!  作者: やばくない奴
二人の巨悪編
24/49

忠告

 その日の放課後、宏太(こうた)は校舎裏に衛宮(えみや)を呼び寄せた。用件が財布の件であることは、もはや言うまでもないだろう。

「衛宮――君が、萩田(はぎた)の金を盗んだんだね」

 そう切り出した宏太は、氷のような眼差しをしていた。無論、これはあくまでも結論に過ぎない。眼前の少年が犯人であることを断定するには、証拠の提示が要される。

「どうしてそう言い切れる?」

 衛宮は訊ねた。その声色は余裕を保っていたものの、彼は内心焦りを覚えていた。何故なら、今彼が対峙している相手は、復讐代行部随一の調査力を誇る男だからだ。


 さっそく、宏太は犯人特定に至った経緯を説明し始める。

「ごみ収集庫を調べたら、財布のあった袋の中には、ハンドペーパーもたくさん捨てられていた。だからトイレの前のごみ箱に財布が捨てられたと見て良い」

 当然、それだけで納得できる衛宮ではない。

「だけど、それだけじゃ犯行時刻まではわからないだろ」

 それが彼の言い分だ。少なからず、筋の通った言葉ではあるだろう。されど、宏太が昼休みに調べたのは、ごみ収集庫だけではない。化粧室も調べ、木下のことも頼った彼は、畳み掛けるように追撃する。

「だからごみ箱に捨てられているプリントを確認したんだ。犯行時刻はおおよそ午前十一時過ぎ。その時間帯にトイレを掃除していた清掃員の名前を、以前の署名用紙のコピーと照らし合わせて、木下先生(きのしたせんせい)に筆跡鑑定を頼んだんだ。その文字は、案の定清掃員のものではなく、君のものだった」

 ここまで証拠が徹底している以上、衛宮は袋の鼠だ。しかしどういうわけか、彼は依然として余裕綽々としている。

「はっ! お手上げだよ、名探偵。それで、オレをどうするつもりなんだ? 今の校風では、復讐代行部を頼る奴なんかいないんだぞ」

「そうかも知れないね」

「特に萩田は、石川(いしかわ)が孤立したことに負い目を感じている! アイツはもう二度と、復讐代行なんか頼まないだろうよ! だから萩田を標的にしたんだ!」

 衛宮とて、愚か者ではない。彼は始めから、復讐代行部を敵に回さないための保険をかけていたのだ。して、萩田であれば二度と潤也(じゅんや)絵里(えり)を頼らない――その考えは、一定の説得力を帯びている。このままでは、彼はただ、悪事を暴かれただけで済んでしまうだろう。


 宏太は告げる。

「……今の会話は録音してある。僕はただ、これを師走(しわす)に渡すだけだよ」

 それはまさしく、復讐代行部と風紀委員――相容れぬ二つの勢力が共闘した瞬間である。言い換えるならば、これは呉越同舟だ。もっとも、師走が誰からも恐れられていないことは、周知の事実だ。衛宮もまた、あの風紀委員長の足元を見ている。

「へぇ。けど、あのいい子ちゃんに何が出来るのかな?」

 これは紛れのない挑発だ。事実として、宏太本人すら師走のことは宛にしていない。されど根本的な話として、宏太は復讐代行を一番の目的に据えているわけでもない。

「僕としても興味深いね。復讐代行で保たれていた秩序を、果たしてアイツが別の形で取り戻せるのか」

 結局のところ、人間観察さえできればそれでいい――というのが彼の価値基準であった。そこには、萩田に対する温情など微塵もない。復讐代行による人間観察ができなくとも、師走の奮闘する姿さえ観察できれば彼の欲求は満たされるのだ。


 最後に、衛宮は一つ警告する。

「そうだ、一つだけアンタに忠告してやるよ」

「忠告……?」

蒼木由依(あおきゆい)には気をつけろ。オレの犯行も、アイツの指示によるものだ」

 蒼木由依。またしても、その名が挙がった。校内で恐れられているのは復讐代行部だけではない。あの女もまた、数多の生徒の抱える畏怖の対象なのだ。


――宏太たちが最大の抑止力であれば、あの女は最大の諸悪の根源と言えるだろう。

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