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我ら復讐代行部!  作者: やばくない奴
二人の巨悪編
23/49

清掃記録表

 あれから宏太(こうた)は、ごみ収集庫で萩田の財布を発見した。無論、財布さえ見つかれば全てが解決するわけでもない。再発防止に努めるには、犯人を特定する必要があるからだ。さっそく、宏太は財布の入っていたごみ袋の特徴を分析する。

「このごみ袋……ペーペータオルがたくさん詰められている。トイレのごみ箱だったと見て問題はなさそうだ」

 続いて、彼はごみ袋を更に漁り、何枚かのプリントを手に取った。

「このプリントは、今日の午前十時の数学の時間に返却されたものだな」

 仮にも、彼は南岬原高の一生徒だ。見覚えのあるプリントは、すぐにわかる。さっそく、宏太はプリントに書かれている名前を確認していく。

相良(さがら)田端(たばた)目白(めじろ)小鳥遊(たかなし)――プリントを捨てたのはこの四人だけか。一見犯人はこの中にいるように見えるが、相互監視が成り立つ時点で、むしろ四人は犯人候補から除外して考えるべきだな。ただし共犯の可能性も否定しきれないから、念頭には置いておこう」

 いつにもまして、彼の推理は丁寧だ。その所作、思考には、一切の無駄がない。

「トイレのごみ箱は利用者が多く、すぐに満杯になる。つまり、プリントが捨てられたのは授業が終わった後の十一時だ。この時間から少しずれた時間帯――つまり目撃者がいない時に、萩田の財布が盗まれたんだろう」

 そんなことを考えながら、彼は教室の最寄りの化粧室へと足を運ばせた。少なくとも、先程名前の挙がった四人が白である前提ならば、彼らはそこにプリントを捨てるはずだからである。


 次に宏太が取った行動は、清掃記録表を写真に撮ることである。これは、のちに犯行時刻辺りに清掃を担当していた人物から証言を得るための行動だ。宏太の調査の手順に、抜かりはない。


 この時、宏太はあることに気づく。

「そうか、十一時より、少し後だ。空っぽ同然のごみ箱に財布を捨てれば、すぐに見つかってしまう。財布を隠すには、より多くのごみが溜まっている方が好都合。つまり、犯人は十一時以降十二時以前の時間帯――おおよそ十一時半に犯行に及んだとするのが自然だ」

 問題は、その時間に生徒の挙動を確認できる者が、トイレを清掃していた者だけだということだ。幸い、化粧室の壁には清掃記録表が貼られている。この時、宏太の中にある考えがよぎる。

「もし僕が犯人だったら、清掃記録表に適当な名前を書くことで捜査をかく乱する。だから僕がすべきことは、特定の時間帯に清掃を担当していた教師を頼ることではなく、書道部顧問である木下を頼ることだ」

 通常なら、清掃記録表に書かれた名前など、多くの人間は気にも留めないだろう。ゆえに偽装は容易く、調査をする者に対するミスリードも実現しやすいのだ。もっとも、仮にその犯行が用いられたとして、宏太には全てお見通しである。彼は推理を行う際、いつも犯人側の視点を脳内でエミュレートしているのだ。


 それから職員室に向かった宏太は、木下(きのした)に声をかける。

「すみません、木下先生」

「お、また筆記鑑定か? 受けて立とう」

「……この清掃記録、例の署名用紙と照らし合わせてみて、どうですかね……」

 彼が見せたのは、いつぞやの署名用紙のコピーと、清掃記録表の写真だ。木下はしばし考え、それから答えを出す。

「……衛宮(えみや)だ。十一時十六分のところだけ、衛宮の字になっている」

――犯人特定だ。されど、今回は復讐代行の依頼など来ていない。

「ありがとうございます、先生」

「しかし、またろくでもないことを考えてはいないだろうな?」

「いえいえ。今回はあくまでも、調査だけが目的です。後のことは、師走に任せるつもりですよ」

 そう語った宏太は、少しばかり退屈そうな顔をしていた。潤也ほどではないにせよ、彼もまたやんわりと退屈を苦手としているようだった。

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