仕事の内容
コストが40万もするだけあって、<<ポイントテレポート>>の習得者は多くない。大都市であり数多の探索者達がいるこのパストラでもギルドに登録している人間の中で習得者は2桁に満たないそうだ。
というか<<ポイントテレポート>>習得者って国家に所属しているケースが多いらしいんだよね。成程確かに片道にはなってしまうものの緊急時の要人の移動に役に立つものね。というか移動するときにもう一人戻りのマーキングをしている術士を連れて行けば、用事だけ済まして即戻る事ができる。時短なんてものじゃない。一応制限距離はあるらしいけど、少なくともこの国の範囲内だったら収まるハズ。そりゃ国も喜々として雇いますわ。
それ以外のフリーの使い手にしても、高位魔術である<<ポイントテレポート>>なんてものを習得している以上基本的にかなりの実力者となるため、仕事やらなにやらでパストラを離れてしまっているケースが多くなかなか捕まらない(アキラさんもまだ戻ってきていなかったとのこと)。
なので、登録以降一切何の仕事も請け負っていない俺の所まで話が回って来たわけだ。
で、そんな仕事だからダンジョン行きか何かと思ったんだけど……話を聞いてみたら、街の中での仕事らしい。
「泥棒の捕縛?」
「うん、そうなんだ」
テイルさんが話してくれた内容をまとめるとこんな感じだった。
パストラには、魔石に関する事業でトップシェアを誇る商会がある。
魔石は、いわば電池だ。この世界では魔道技巧という技術がある。これはいわば俺たちの世界でいう科学技術なものだ。その動力源となるのがこの魔石である。
ただ現状だとそこまで複雑なものはなく、尚且つ魔石が高価な為そこまでは民間にはほぼ普及していない。使っているのは王侯貴族とか大商人とかそんな感じの人々だ。まぁ贅沢品だね。
パストラが拠点になっているのはこの国の流通の中心となっているってことと魔石が採取可能であるクアンドロ地下遺跡が比較的近郊にあるからだろうけど。魔石を採取できるゴーレムとかガーゴイルが魔法抵抗高い上に物理的にも固いから、よっぽどの高レベルじゃないと採取難しいんだよねぇ。そしてその高レベルの人間だったら他の仕事の方が稼げるという。
だからこそ俺にとっては狙い目なんだけど……
話がそれたな。
んで、その商会──アトランド商会っていうんだけど、そこの倉庫で最近何度か盗難が起きているらしい。
いや、街の警備隊の仕事じゃねって思うし、当然商会も通報はしており調査や巡回は行っているらしいんだけど成果が今の所無し。並行して警備増強はしているらしいんだけど、すり抜けて忍びこまれるらしい。
勿論警備兵をくっそ増やして死角をなくせば防げる(実際数日間そうしたらその間は盗難被害はなかったらしい)けど、警備兵だってタダじゃないわけでずっとその体制を続けるわけにはいかない。
魔石の側で監視すればいいのでは? と思うんだけど、魔石は本当に極微量の魔力を放出しているらしく、さすがに倉庫にある分量の側にずっといると魔力酔いみたいな状態になっちゃうらしいんだよね。
かといってばらけさせて保管すれば本末転倒だし。
そこで出た案が、わざと警備の穴を開けそこに誘いこんで犯人を捕らえる作戦。遠隔からその場所を魔術で監視し、出現した時点で<<ポイントテレポート>>で駆けつけ一気に捕縛するという作戦である。そのために<<ポイントテレポート>>使いを複数集めているという話だった。何せいつ出現するかわからないので、可能であれば交代制にして早期に事を片付けたいらしい。
「で、どうかな? 報酬はこんなもんなんだけど」
そういって掲示された報酬はそれなりの額だった。まぁ俺は例外だけど、<<ポイントテレポート>>取得者だと普通はさっき言った通り上位の実力者だし金はかかるよね。
正直報酬は文句ない。グリッドの街で貰ったお金も生活必需品の購入とかで大分心もとなくなってきているし、現状収入の宛てがリスナーからの投げ銭な俺にとってはこの臨時収入は非常にありがたいけど……
俺は差し出された資料から視線だけ上げて、上目遣いに彼女を見て懸念を口にする。
「あのさ、知ってると思うけど私戦闘能力はほぼ皆無なんだけど……」
そんな俺の言葉に、彼女は力こぶを作るようなポーズをして満面の笑みで答えた。
「大丈夫、カズサちゃんはボクが絶対守るから! 傷一つだって付けさせやしないよ!」
『トゥンク……』
『キュンキュンした?』
『表現が古くない?』
だから俺はそんなにチョロくないから! 後最後の奴は俺も同意する!
『てかさ、カズサちゃんのポジってどう見ても異世界転生したヒーローじゃなくて、ヒロインの方のポジションだよね?』
いうな! 俺もちょっとそう思っている節があるから!
『そもそも今メイド服だからなー』
それは仕方ないだろ!




