顔合わせ
「グウェン・ハスタルガードだ。今回はよろしく頼む」
そう言って差し出された手はとても大きかった。俺の手と対比するとさすがに倍とはいわないが、大人と子供位の違いはある。今の俺のサイズは元の男の頃だったよりも小さくなっているけど、元の俺のサイズよりも大きい。それに節くれだった固そうな、いかにも戦う人! って感じの手だった。
サイズが大きいのは手だけではなく、体のサイズも大きかった。縦にも、横にも。当然太っているわけではなく、鍛えられたがっしりとした体つきだ。身長の方は優に俺より頭一つ分は高い。さすがに200cmは超えてなさそうだけど、190cmは超えてそうだ。
「カズサです。よろしくお願いします」
言葉と共に差し出された手に握手を返すと、その無骨な見た目から予想はつかない程優しく握り返された。サイズが違いすぎて握られたというより、包み込まれたという感じがある。ちょっと力込められたら俺の手バキバキに折れそう。
最初にその姿を見た時は、正直驚いた。
港町パストラは探索者はいっぱいいるしいろんな人種もいるからこれくらいガッシリした人はそこそこ見かけるんだけど、どうも身長に関しては現代日本の平均身長より少し低いらしくてここまで大きい人はそうそう見ない。
何より、女性としても決して大柄とはいえないテイルさんの相方としてのイメージからは完全に外れていたので。
そう、彼、ハスタルガードさんは話に聞いていた、テイルさんの仕事上の相棒だ。
夜俺の部屋で雑談しているときとかにちょこちょこ話には出てたんだけど、具体的な容貌とか話に聞いてなかった。年が離れているとは聞いていたけど、二十代後半くらいだと思ってたんだよね。で、それくらいの年齢だとなると……ってちょっと警戒してた。ぶっちゃけ今の俺客観的に見て可愛いので、そっち向けの目で見られてたらどうしようかって。テイルさんの話を聞く限りそんな気配を感じさせる事はまったくなかったけど、もし粉掛けられたりした場合に普段なら適当にあしらえばいいんだけど、テイルさんの知り合いとかだと邪険にもできないかなって。ちょっとだけ、ちょっとだけ不安に思ってたんですよ。
そのちょっとの不安も無駄でしたわ。
今俺の目の前に立っているハスタルガードさんは壮年の男性だった。年の頃は40歳くらいかな? 体がめっちゃ鍛えられているから中年って感じはしないけど。この世界結婚や出産が現代日本よりくらべて早めだから、テイルさんから見ると親よりも年上なのでは? という感じがする。
ただまぁこれくらいの年齢で俺やテイルさんくらいの娘に不埒な視線を向けてくるのはいる。俺も女になって大分立つのでそんな目で見られているときはなんとなくわかる。けど、この人にはそんな感じは全くない。
本当に余計な心配だったみたいだ。ちょっと安堵のため息を吐く。自意識過剰かと思われるかもしれないけど、そこそこそういった視線に晒されてくると気になってきちゃうもんよ。
『良かったぜ、ここでイケメンが出てきて俺のカズサちゃんがNTRれたらどうしようかと』
『ストーカー思考の方はお帰りください』
『全くだ。だいたいまだカズサちゃんが枯れ専の可能性が』
ねーよ。元男でしかも枯れ専って特殊過ぎるだろ。
『でもこの人めちゃめちゃマッシブではあるけど、イケオジの部類だよね』
『こんなオジサマがバーとかやってたらちょっと通っちゃうかも?』
『バーの店長にしてはちょっとごつすぎない? どう見ても用心棒』
『すげぇ安心して飲めそう……酔ってやらかしたら死ぬけど』
『正直抱かれてもいいと思う。ちな男』
……なんかテイルさんとかアキラさんと同様にファンが付きそうだな……まぁ外見上のキャラ濃いしなぁ。
まぁでもちょっと話を戻そうか。
こうやって俺がハスタルガードさんと会っている理由だけど、単純にテイルさんの相棒として紹介するためだけではない。先日テイルさんから依頼された件に協力するためである。その為の顔合わせでそのまま仕事に移行する。
ちなみに俺とテイルさん達二人だけではなく、もう一組熟練?らしい30代くらいの男女ペアの探索者が一緒だった。てか面子のせいで俺とテイルさんがものすごい子供に見える気がする。まぁ実年齢にしても子供か、俺もこの三人に比べれば全然年下だし。
「それじゃ移動するか。えっと……カズサさんでいいか?」
無事全員の顔合わせを終え、ハスタルガードさんがそう声を掛けて来た。
顔合わせ自体は街の個室のある食堂みたいな所でやったんだけど、その後は別の所に移動して監視するそうだ。んでその前に今回の監視対象となる倉庫の所にいく事になった。俺の<<ポイントテレポート>>のポイント設置と、監視術の展開をしないといけないしね(こっちはストラダ夫妻……男女ペアの方は夫婦らしいが担当してくれるとの事。テイルさんとハスタルガードさんはどちらも戦闘系でそういった術は得意じゃないそうだ)。
「カズサでいいですよ」
問われた言葉にはそう返す。年齢的にはずっと上だし、ちょっと顔合わせるだけならともかくしばらく一緒に行動するとなるとさん付けで呼ばれ続けるのはなんかむず痒い。
「解った。俺の事もグウェンでいいぞ、呼びづらいだろ……はは、よく言われるから気にしなくていいぞ」
言われた瞬間ちょっとそう思っていた事が顔に出ていたらしく、それを見たグウェンさんは気持ちのいい笑みとともにそう声を上げて笑った。うん、最初のイメージで年齢差もあるし上手くコミュニケーションできるかな? と思ったけど、問題なさそう。よく考えればテイルちゃんと組んでるわけだし、若い女の子との付き合い方とか慣れたものか。いや俺に対しては若い男の子への付き合い方でも大丈夫ですけどね? どうもテイルさん含め最近女性と話す事の方が圧倒的に多いので女の子相手の方が話しやすくなってきちゃってる感じがするけど、ちゃんと男の時の感覚も残ってるから!
前回残MP:6030
今回増減:
スパチャ +95900(※メイドRP+前回からの経過日数分の増加分)
残MP:101930




