6.チュートリアルだ!
店を出た二人。それなりに腹はふくれていた。
「うう、う゛い゛い゛」
お腹を押さえるカナタ。
「まださっき食べたのが気になるの?」
「いやすまん。大丈夫だ。ところでさ」
「え?」
「リナはしばらくこの街に滞在してたんだよな? 俺は初めてだからいろいろ教えてくれよ」
少しの期待感を込めてカナタが頼む。
「いいよ。付いてきて」
リナを先頭に街を歩く。
観光地とのことで人の往来も多い。活気がありそうだ。
露店が並び、聞いたことのない言葉と、香ばしい匂いが混ざり合っている。
大道芸のようなことをしている人もいれば、妙にリアルなモンスターの剥製を売っている店もあった。
「思ってたより普通に栄えてるな……」
「でしょ? 住みやすいよここ」
「観光地って言ってたけど、みんな何を見に来るんだ?」
「よくわからない」
「いいのかそれで」
そうこうしているうちに、リナが店の前で立ち止まった。
「まずこれが武器屋。武器を売っているよ」
「え?」
「こっちが防具屋。防具を売っているよ」
「あのさ……」
「あっ、大事なことを忘れてた」
慌てるリナ。それを見てカナタは安心したように息をつく。
「武器や防具はしっかり装備しないと意味がないよ」
「あ、はい」
肩を落としかける。
「こっちが道具屋。道具を売っているよ」
「今時珍しいほどの古くさい説明だ……」
「どうしたの?」
「いや、あのさ、もしかしてファミコン世代?」
「何が?」
きょとんとするリナだが、何かを察したように続ける。
「ああ、わかった。初心者に対する説明みたいで、物足りなかったんでしょ」
「そう、そこなんだ!」
満面の笑みを浮かべるカナタ。
わかってもらえたという達成感がそこにはあった。
「ううん、ちょっと聞いて。私が異世界に来る前のことなんだけど」
「うん」
「友達とアイドルのライブに行こうとしてたの」
「ほう」
頷くカナタ。
「でね、サイリウム持ってるか気になったから、その友達に聞いたわけ」
「ああ、ライブに行くとき使うかもな」
「何それ、って言うからさ、スマホでサイリウムって検索しなよって言ったんだ」
「ふむふむ」
「で、友達が検索するのを横から見てたらさ。便秘薬がいっぱい出てきたんだよ」
「え、あ、ええ?」
「サイリウムって、ペンライトみたいなやつと、便秘薬と両方で使われる単語なんだよ」
「う、うん」
「どっちがどっちか、わかりにくいよね?」
「確かに……」
「つまり、私が言いたかったのもそういうことよ」
「どういうことだよ!」
カナタの怒りが爆発する。
「結構なっがい話を聞いてたんだぞこっちは」
「わかりやすく説明した方がいいよって話」
「そんな結論になるか!」
エネルギーだけが消費されていく。
「ふう、あ、そうだ。異世界らしくギルドを案内してくれよ。そこで依頼を受けていけばいいんだろ」
「うん、わかったよ。ちょうど私が所属しようかなと迷ってるギルドもあるんだ。よければ一緒に入ろうよ」
迷ってる、というリナの言葉に少し気になるものを感じたが、カナタは再び彼女の後について歩き出した。




