41.会議で決裂だ!
「それでは砦の攻め方だが、そもそも中がどうなっているのかはわからない」
シベリスが仕切っているが、いきなり難しいことを言う。
「どんなモンスターがどれだけいるかという情報もない。だから攻め入る前に斥候を出すべきだと私は思う」
「賛成だ」
カナタも応じた。
「そして斥候が持って帰ってきた情報を元に、まずは私たちのパーティーが砦を攻めに行こうか。つまり私とアンネだ」
どうやらシベリスとアンネはパーティーを組んでいたらしい。
「よし、じゃあそれで苦戦しそうだったら俺たちのパーティーが次に行くよ」
カナタが名前を忘れている戦士と、ウィザードであるアンナが名乗り出た。
「それでも駄目そうだったら私たちが行くね」
今度はアルナとアレレが立候補する。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
カナタがこの流れに歯止めをかけた。
皆が一斉に注目する。リナですら、何を言い出すのかという表情でカナタの方をみていた。
「いやいやいや、それじゃあダメだろ。戦力の逐次投入は愚策だよ」
自信ありげに言うカナタ。
「ほう? それはなぜだ?」
シベリスに聞き返された。
「え?」
「どうして愚策なのか、説明してくれ」
「あの、戦力を次々に敵に向かわせるのは良くないってことだよ」
「表現を変えて、同じこと言ってるだけじゃないか」
ぐうの音も出ない。
「根拠が薄弱だな。ピンチになったところへ増援を送るのは当然だろう。何も知らないのだな」
カナタは言葉に詰まる。シベリスの方も作戦が有効である根拠は示していないが、話を先に進めようとする。
「しかしどうやったら我々が砦を奪還した、ということになるのか。それも問題だ」
確かに、とカナタは思った。そして再び発言する。
「砦のモンスターたちの中にボスがいるはずだ。そいつを倒せば他のモンスターは逃げていくと思う」
カナタはゲームや小説で得た知識からそう主張した。
「ボスがいるなら統率してるはずだから、倒せば統制が崩れる。砦に入ったらボスを探すのを優先しよう」
「はっ、素人はこれだから困る。砦の壁に大きな旗が掲げられているだろう? それを奪って私たちの国の旗に替える。それで決着。これが戦いというものだ。」
シベリスがすぐさま反対してきた。
「でも中の敵は戦うのをやめるかな? 外の旗って中からはどうなってるのか見るのが難しいし、モンスターが旗を見たからって降参するとも思えないんだが」
「……それは、残っているモンスターを全て掃討すればいい」
「結局、旗がどうなっていてもモンスターを全て倒す必要があるってことか? 俺たちも砦の中で戦っていては、外から旗が確認できないぞ」
カナタが反論するが、シベリスは大げさにため息をついて、かぶりを振って、肩をすくめた。
「全部の動作が癪に障るぞ」
シベリスはカナタの抗議には応えずに他のメンツの顔を見る。
「どうやらこのカナタ君と私とは意見が異なるようだ。皆はどうする? 私の意見に賛成か、それともこちらの素人さんの意見の方か」
誰もカナタの方を見ない。だが、アンネがほんの一瞬だけ眉をひそめたように見えた。
と思ったら、リナが少しカナタの方に身体を寄せてきた。
持つべきものは仲間だと思ったカナタである。
「さあ、どうやら私の策を皆は選択したようだぞ。君たちも従うか、あくまで自分たちの好きなようにするか」
「うっ……」
一瞬、言葉が喉で止まる。
思わずシベリスの意見に従うと言ってしまいそうになるカナタだったが、それより先にリナが動いていた。
「わかったよ。じゃあ私たちは好きにやらせてもらうから」
そう言ってカナタの手を掴んで立ち上がる。
「……あんたの反対意見を切り捨てていくやり方、気に入らないんだよね」
シベリスの方を見てはっきりと言った。
「もう私たちも砦奪還の依頼を受けることはギルドに伝えたからね。人数制限がない以上、私たちも平等に依頼を受けられる」
「ふん、その通りだし構わんよ。だが、私たちの方が砦の奪還に成功しても、もちろん君たちへの報酬はゼロだ」
「それはお互い様でしょ」
リナは振り返らずに歩いて行く。カナタは慌ててその後を追った。
カナタがギルドを出た途端に、中からギャハハと大きな笑い声がした。
不快に感じて眉をひそめるカナタ。
「陰で笑われる感じ、久しぶりだ。なんか学生時代を思い出して嫌だな」
「あんた結構辛い日々を送ってたの?」
「いや、たまにそういうこともあるさ。ところでよかったのか? あいつらと組んで依頼を受けた方がうまくいったかもしれないのに」
リナはカナタを見据える。そしてこう言った。
「まあ、どちらかと言ったら僅差でカナタの方がマシかなって思っただけだよ」
「僅差かよ」
そうは言いつつも、先ほどまでの苛立ちが消えていくのを感じていた。
「じゃあ、俺たちは俺たちで砦攻略と行くか」




