40.依頼の前の作戦会議だ!
「ところでお前たちは誰なんだ?」
ギルドのテーブル席に着こうとしたカナタとリナだったが、他の冒険者から先に質問が来た。
「冒険者をやってます、カナタです」
「同じくリナです」
最低限の情報のみの自己紹介。だがそれ以上の質問はなかった。
素性さえわかれば、それ以外のことには特に興味を持たれていなかったということだろう。
「私は昨日会ったな。シベリスだ。一応戦士だ」
そう言ってシベリスが隣の席の女性の方を見る。自己紹介の流れになったようだった。
「私はアンネ。ソーサラーです」
「私はアンナ。ウィザードです」
「私はアルナ。マジシャンです」
3人の女性が立ってそれぞれ自己紹介する。
「……どう違うんだ?」
カナタがもっともな疑問を口にするが、それには答える者がいなかった。
「名前も似てるし、姉妹なのか?」
「「「いえ違います」」」
「声までそろってるじゃないか!」
疲れてくるカナタを尻目に、さらにもう一人が立った。
「私はアレレ。Tryllekunstnerです」
「……何だって?」
「トリルレクンストナーです」
「すまん、もう一回」
「トリルレクンストナー」
「……どういう職業なんだ」
「わかりません」
「本人もわからんのか!」
カナタの怒りが爆発する。
「北欧語で、魔術師って意味らしいよ」
リナが助け船を出す。
「よく知ってるな」
感心するカナタだ。
「首から下げてある札に書いてあるよ」
「ああ、そうでした」
アレレの首には”Tryllekunstnerは、北欧語で魔術師という意味です。覚えてね”と書かれた札が下げられていた。
「あんた、こんな社員証みたく持ち歩いてて覚えてないのかよ」
「社員証?」
「会社で首から下げるやつだよ」
「会社?」
「もういいや、俺が悪かった」
カナタが諦める。
「北欧って言葉は通じるのに、会社は通じねえのかよ。どうなってんだこの世界」
「アレレは世間知らずなのです」
アルナのフォローが入る。
それでもカナタはぶつくさ言っていたが、その他の5人の自己紹介が済んだところで本題に入られた。
「砦の攻略部隊が全部で12人集まったわけだ。頼もしいねえ」
シベリスが軽く手を叩いた。
「じゃあ、ここからは遊びじゃない。仕事の話をしようか」
そのまま彼が仕切っている。王の間でもそうだったが、自分を中心に話をしたがる人物性のようだ。
「バイート砦の地図とかないの?」
リナが早速質問する。会議が動き始めた。
「砦内部の地図は機密情報らしく、王からはもらえなかった。困った話さ。城の兵士ならばもらえるんだろうけれどね」
「そもそも、なぜ正式な城の兵士ではなく冒険者の俺たちに依頼が来たんだ?」
カナタも事情を尋ねる。
「バイートの砦は隣のダーグ国にも近い。この砦があるから、ダーグ国がこちらへ攻めてこられない。砦を攻撃しているうちに城から正規軍がやってくるからね。牽制の役割もしていたのだよ」
「ふむふむ」
「ところがそんな砦があっさりモンスターに取られてしまった。正規の兵団で取り返すとしても激しい戦いになり、ダーグ国にもバレる」
「そうね」
皆が頷きながら聞いている。
「ダーグ国の奴らはこう思う。あそこの砦は簡単に奪える、と。これでは牽制の役目が果たせない」
「もともと避難訓練で全員が砦を空けるような、ヤバい監視体制だったじゃないか」
「まあそれもそうなんだが、王様からすると砦を奪われたのも失態だ。それも隠し通したい。だから我々なのさ。いわば遊撃部隊だ。知られずに好き勝手に動いて砦を奪い返す」
「私たちが全滅しても、冒険者たちが依頼に失敗したとしか受け止められないしね」
リナも理解したようで補足してきた。
「いきさつは理解できたかな? ではいよいよ砦の攻め方を相談しようか」




