39.依頼書の扱いだ!
「さて、王様は今日にはギルドに依頼書が貼られると言ってたな」
「自己顕示欲が高そうな王様だけど、ちゃんと自分でギルドまで来たのかな?」
「まさかあ、さすがに従者が来たでしょ」
カナタとリナは昼過ぎにギルド【魂の炎】にやってきた。
モンスターに乗っ取られたバイート砦を奪還してほしいという依頼を、王様がギルドに持ち込んでいるはずだったのだ。
「あ……これ」
Fランクの依頼書が貼られた壁。
その隅っこに王様の依頼はあった。
「こんなに隅に……王様からの依頼でも、特別扱いはしないということなのか」
他の依頼書と比べても全く目立っていない。その上、ほとんどの依頼書が上を2つの画鋲で留められているのに対して王様の依頼書は画鋲1つだけだ。
しかも上の真ん中ほどの位置に画鋲が留めてあるわけでもなく、やや右側に寄せている。そのために傾いていた。紙のところどころに握りしめたようなしわが付いている。
「依頼は、昨日聞いていたとおり砦のモンスターを倒せって内容だね」
リナが顔を近づけて読んでいる。
「依頼者のところに”王様”って書かれてるけど、二重線で消されてる」
「マウリス2世って書き直してるな。これが王様の名前か」
「”王様”で通じると思ってるところに驕りが見えるよ」
「厳しいな」
「しかしどうしてランクがFなのかな。結構重要な依頼だと思うのに」
リナの意見はもっともだった。カナタも肩をすくめる。
「ああ、これですか……」
受付の女性が話しかけてきた。
「確かに昨日王様がいらしたんですが、わしは王様だからこんなにめんどくさい手続きは必要ない、と仰って、暴れて」
「王自身が本当に来たんだ……それでまさか、あなたが腹いせにFランクの依頼に格下げを?」
「いえいえ、そんな公私混同はしませんよ。でも、王様がお怒りになってご自分でこの壁に貼られたのです」
「はあ……」
合点がいったカナタたちだが、特に依頼を適切なランクに戻したりはしないギルドの姿勢にも少し底冷えがした。
「この扱いはさすがにひどい気がするな」
「今年の自伝には、この恨み辛みが書かれそうだよね」
王立図書館に並んだ王の自伝のことを思い出す二人。
「おっ、やはり君たちも来たのか」
ギルドに誰か入ってきたらしく、声をかけられた。
カナタが振り向くと、昨日王の間で会ったシベリスたち冒険者集団だ。ここに集まることにしていたようだった。
「そこに王様の依頼書があるのか。見せてくれ」
リナが身体をどけるとシベリスたちは壁の依頼書を読む。思った以上の悲惨な扱いにやや顔をしかめた者もいた。
「ふむ、依頼の人数制限はないから、我々は全員でこの依頼を受けられるな」
「それじゃあ、皆で砦を取り返しに行くってことか?」
カナタが疑問を口にする。
「ああ。君たちも行くつもりなんだろう? テーブルにつきたまえよ。作戦会議をしよう」
そう言ってシベリスは空いている席を指さした。




