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なんなんだこの異世界は、常識ないんか  作者: 嵐山ノキ


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38/44

38.正式な手順だ!

「王様、先ほどの、モンスターを倒してバイートの砦を奪回してほしいとの依頼には問題があります」


 カナタは自信ありげに言う。一歩も引かないという信念がその瞳から見て取れた。


「ほほう。問題とは何か。申してみよ」

 

「はい。僕たちはギルドに所属しているので、依頼もギルドを通してもらわないと困ります」


「なに?」


 その場の何人かはなるほどという顔をしたが、リナは気が気でなかった。


「いいですか。指揮命令系統というのがあります。ギルドの会員に依頼したい場合は、王様がまずギルドに依頼し、ギルドがその依頼を会員に渡す。こうです」


「それはわかっているが……」


「平社員の上が課長、その上が部長だとして、部長が課長を飛ばして平社員に直接仕事を指示するのはよくないと言われます。また、平社員も課長を飛ばして部長に仕事の内容を報告するのはよくない。僕も勤めていた会社では……」


「ちょっと、ちょっとカナタ」


 なぜか興奮してきたカナタの肩をリナが数回叩く。


「なんで王様に会社の研修を始めてるのよ」


「わかりやすいかと思って。王様、いいですか。ギルドを通す。ギルドを通すのですよ王様。それができないようならばパワハラで訴えられ……」


「わかったわかった、そんなに何度も言わなくてもよいではないか……」


 王は困ったように大臣の方を向くが、大臣は肩をすくめただけだった。次にカナタたち以外の冒険者の方を見たが、誰も王様に目を合わせようとしなかった。


「うう……面倒くさいが、ギルドまで行くか……」


「はい! 依頼書が貼ってあるのを見たら、僕たちがしっかり依頼を受けます!」


「いきなり元気なお利口キャラになったね」


 リナも驚くことばかりだ。王がカナタの言い分を聞いて納得し、カナタは優等生のように目を輝かせている。


(これで確実に正式依頼になる)

 

 カナタは内心、上手くいったと思っていた。これを受けることでギルド内での格が上がるし、報酬もきっちり出るだろう。

 

「……なるほど、理屈で王を動かすか」

 

 長髪の男が呟いた。

 

「どうも疲れた。皆、集まってもらってすまなかったな……依頼はギルドを通してするから、確認して対処してくれ。では帰ってよいぞ」


 疲労困憊の王様は、大臣に肩を借りて一足先に王の間から出て行った。

 

「まさかカナタが言ってたことに納得されるなんて……」


 王の間から出て行く冒険者たちを見ながら、リナは信じられないものを見たという表情のままだった。


「いや、君、凄いな」


 仕事を終えたように大息をつくカナタ。そんな彼に話しかけてくる声があった。


 見ると、序盤に主導権を握ろうとしていた長髪の男だ。


「なんですかあなたは」


「なんですかって、ひどいな。私はシベリス。冒険者をしている。君と同じくギルド所属だ」


「あ、はい」


「王様を相手に一歩も引かずに自分の主張を通す……なかなかできることではない」


「あ、はい」


「そして依頼書を見たらすぐに砦へ行くつもりだという。モンスターを相手にするのでたじろぐ者もいるだろうに。腕に覚えがあるのだね?」


「あ、はい」


「そのコピペみたいな返答はやめたまえ。私と話すのが嫌か」


「まあ、少しだけ。あくまで少しだけですよ」


「少しと言われても傷つくものだな。まあよい。私も依頼書を確認したらバイートの砦へ行く。また会えたらいいな」


「あ、はい」


 カナタのコピペのような返答を聞きながら、シベリスは去って行った。

 

 そして次の日――ギルドに出向いたカナタとリナは、あまりにも雑に扱われている依頼書を目撃することになる。

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