37.王様からの依頼だ!
「ねえ、そろそろ玉座に行ってみない?」
「王の間ってことか? 行けるんだろうか」
「自由に入れるんだから、大丈夫でしょ」
いつの間にかリナの方が乗り気だ。
そして何人かが王の間へと歩いて行こうとしている。いずれも冒険者風で武器を携えているのが少し気になった。
「そういえば、今日はモンスターはいないな。今回はモンスター向けには解放されていないのか」
「そもそも前回、一般公開とか言ってモンスターもご自由にお入り下さい状態だったのがおかしいのよ」
王の間へ通じる重厚な扉があるが、今日は開いている。冒険者風の男女がそこへ入っていく。
「私たちも、入っちゃうわけ?」
「せっかくだからな」
カナタとリナもさも当然のように王の間へと入った。
外からの陽の光が玉座を照らし、そこに腰掛けている王の姿を映し出した。
玉座のすぐ近くには大臣であろう男性。そして集められたと思しき冒険者たちが8人いた。
「え、私たちもここに立ってる感じ?」
「何か始まりそうだし、とにかく話を聞いてみるか」
カナタとリナが末席に並ぶ。そのタイミングで王が口を開いた。
「うむ。これで全員か」
カナタたちは見下ろされているような感覚を覚えた。
「わざわざギルドに所属の屈強な冒険者に集まってもらい感謝する。しかも秘密裏にここに来てもらうためには、一般開放の日を選ぶしかなかった」
「なるほど、人を隠すなら人の中、というわけですか」
長髪の男がわかったようなことを言った。そして続ける。
「おそらく王様は、我々に極秘の任務を頼みたい、ということなのでしょうね」
「あいつなんなんだ?」
カナタは小声でリナに喋りかけた。
「まあ、解説してくれる便利キャラだと思おうよ」
「うむ。話が早くて助かるな。実は……バイートの砦がモンスターに乗っ取られた」
「!」
「そこでだ。お前たちには、モンスターを倒してこの砦を奪還してもらいたい」
冒険者たちがざわつく。
カナタたちは状況が飲み込めず、キョロキョロとしていた。早く長髪の男が解説してくれないかと思った。
「バイートの砦が……あそこはモンスターのみならず隣接するダーグ国をも監視する要衝のはず」
やはり長髪の男が喋り始めたので、カナタはリナと目を合わせてガッツポーズする。
「ん?」
隣の男に不審がられてしまった。カナタは頭をかいてごまかした。
「兵士たちも強者揃いと聞いていましたが、なぜモンスターなどに不覚を取ったのでしょうか」
さすが長髪の男だけあって、カナタの聞いてほしいことを尋ねてくれた。
「うむ……実は砦の避難訓練で皆が城門の外に集まっていたら、その隙に入り込まれてな」
「この世界ってバカが多いの?」
リナが小声で呟く。
「となると、避難訓練のことをモンスターに教えた者がいる……王様、内通者がおりますぞ」
「いや、避難訓練の日時のお知らせを砦の壁に何枚も貼っておったのだ」
「むむ、すると情報は筒抜け……」
「この人たち真面目にやってるのかな?」
リナは呆れて言う。
「つまり罠でも何でもなく、普通に隙を突かれただけか。そうでしょう、王様」
ついにカナタが口を挟んだ。リナはぎょっとする。
「ちょ、余計なこと言いそうな気がする……」
「リナ、いいから。王様、先ほどの依頼には大きな問題がございます」
カナタは一歩前に出て言った。
周囲の冒険者たちは顔を見合わせる。
王はわずかに口元を緩め、カナタの言葉を待った。




