36.お城の施設だ!
「お城の就職窓口って、意外と求人紹介してるんだね」
「り、リナ、これ……」
カナタが指を指したのは求人票である。
「王様が暑がっているときにうちわで扇ぐ求人は、もう決まっちゃって募集終了だって」
「あったんだその仕事」
呆れ顔のリナ。
「あっ!」
「どうしたのよ大声出して」
「うちわで扇がれている王様の机に積まれた書類が飛ばないよう押さえている仕事! これはまだ求人出されてるぞ!」
「バカなの? 重しを置けばいいでしょ」
こんな仕事に給料を払っているなんて。国の財政のことが思いやられるリナだった。
「そうか、後はまあ、兵士とかの募集だからな。俺には向かない。俺の方が強いし」
「……仕事もいいけど、王立図書館ってあるんだね。行かない?」
二人は就職窓口を後にして、王立図書館へ向かう。
「城内に図書館があるんだ……すごい蔵書の数」
ずらりと並んだ歴史のありそうな本の数々。
大きな本棚が床にそびえ立ち、天井のシャンデリアにまで届こうとしている。
「人はあまりいないみたいだな」
「難しそうな本も多いし」
「あっ、あそこの棚、全部”王様自伝”って本が並んでるよ」
紫の背表紙に金縁の文字のハードカバー。重厚さを感じさせる。
「3巻、4巻、5巻が2冊……うわ、20巻以上出てるんだね」
「王様が毎年書いて出してるらしい」
「自伝って、毎年出すものなの……?」
カナタは肩をすくめる。週刊誌で王の人となりについて読んだことがあって、それの受け売りだ。
リナは別の本棚を眺め、そこでも声を上げる。
「えっ!? この魔術書”古代魔法の原理と応用”、著者が王様だって!」
「こっちの学術書の”王国の経済と発展の歴史”の著者も王様ってなってるな」
「王様、こんなにいろいろ書ける人なの……? すごい才能」
「いや、市井の学者が書いたのを自分の手柄にして著者名に入れてるんだって」
「自己顕示欲の方がすごい」
カナタが本の奥付を見る。実際に書いた学者の名前はそこでのみ確認できた。
「焚書坑儒とどっちがひどいかな」
「統治目的じゃない分、ポリシーはないけど性質は悪いよね」
カナタも図書館を見て回る。そしてある一冊に目を留めて、それをテーブルまで持ってきた。
「これ何の本? 見たことのない文字だけど」
「古代の魔法書だよ」
「こんなの読めるの? 全然知らない文字だよ」
「俺ぐらいになると、表紙に手をかざしたら本の方から語りかけてくる」
「本当かなあ?」
「サブスキル:本のひととき!」
そう言ってカナタは古代の魔法書の表紙に手をかざす。
リナには魔法書が光ったように見えた。
「ん? ふん、うん。うんうんうん。その封印だよな」
「すごい、本当に本と会話してるみたい」
リナの感想は”すごい”ばかりである。
「はは、うん、おお……ん?」
「え?」
「なんだとこの野郎! もう読まない!」
「なんか怒りだした……」
魔法書は光を失い、カナタは表紙から手を放した。そして無言で棚に戻しに行った。
「なんか気に入らないことを言われたの?」
「ここから先は有料だって言うからさ」
「何をどこに払うのよ……」
呆れたまま二人は図書館を後にした。




