35.お城だ!
宿の幽霊事件後、カナタとリナは順調にいくつかの依頼をこなしていた。
レベルもカナタが15、リナが16。メインスキルもサブスキルもそれぞれレベルが上がり、できることも増えつつあった。
「しかしこの前の、雪のスキー場での落とし物探しは参ったな」
朝のカフェでカナタは、この前の依頼についてしみじみと思い返す。
「そうだよね。私スキーするの初めてで、転ぶかと思ったよ」
「最初はみんな転ぶもんだから」
リナはコーヒーに口を付ける。
「うん、周り見てたら皆転んでたし、若い子たちの集団も倒れて呻いてた」
「救助隊の担架が20往復ぐらいしてたよな。現われたモンスターも転んでたけど救助を後回しにされてかわいそうだった」
「あのスキー場、大丈夫なのかな」
「呪われてるんじゃないかと思ったな……さて」
自分の分の昆布茶を飲み終えたカナタは席を立つ。
「どこか行くの? 今日は一緒にギルドに依頼を見に行こうかと思ってたけど」
「ちょっとお城へ行ってくる」
「ちょっと行く場所じゃないと思うけど……」
不思議に思うリナ。
「新聞に書いてあったんだけど、今日は一般公開の日なんだ」
「なんでそんなことしてるの?」
「就職活動中の学生歓迎だってさ」
「つまり、職場説明会?」
合点がいったようだ。リナも異世界に来る前は就職活動して内定ももらっていたらしい。
「そういう感じだな。前回はモンスターや悪魔も来て、盛況だったって」
「治安どうなってるの!」
思わず突っ込みが入る。
「敵になるかもしれないモンスターたちを城に入れちゃうなんて! おかしい!」
「これから少子化で人材不足になるっていうじゃん」
「モンスターは何をする人材なのよ……」
呆れ顔のリナだが、さっさと行こうとするカナタに着いていこうとする。
コーヒーの伝票をテーブルの上に探したが、すでにカナタが勘定を済ませているところだった。
「そういうところはきっちりしてるよね」
まんざらでもない気持ちで後を追う。
「でも、お城に行くってことはカナタはお城に就職したいの?」
「どうかな? 一応、どんな求人があるのかは気になるじゃん。高給取りになれるかも」
「まあ、そうね」
「王直属の仕事があるかも」
「そう期待しておいて、暑がっている王様をうちわで扇ぐ係とかしかないかもよ。それでもやるの?」
「うーん、給料によるな」
「やるんかい」
そして二人は異世界に来て始めて、王の居城へと足を踏み入れた。
「うわあ……王立就職相談ホールがあるね」
さっそくカナタはホワイトボードに貼られている求人表に目を通し始めた。
「こ、これは……」




