4.腹ごしらえだ!
少し歩いたところで街に着いた。
リナはここを拠点にしているようで、勝手知ったる様子で歩いていく。
カナタはその後についていく。
しばらく歩いたあと、二人はようやく一軒の店に入った。
「ふう……やっと店入れた」
カナタは椅子に沈み込む。店の前に列ができていて、20分も待ったのだ。
「ここ観光地だからね。飲食店は混むよ」
「観光地なのか」
「多分ね。人多いし」
「列が短いとこを選んだのに、20分待ちってどういうことだよ」
「はいはいわかったわかった」
リナは気にせずメニューを開いた。
カナタは気持ちを切り替えたように尋ねる。
「何を頼もうかな。メニュー読み上げてくれる?」
「いいけど」
リナはお品書きの書かれた紙を覗き込む。
「えーと、ボルシチにピロシキにペリメニ……」
「俺たちロシアに来たの?」
「いや、あ、これサイドメニューだった」
「サイドでそれなの? どういう判断だろうか」
「メインじゃないらしいね」
「メインの方にするかな。怖いけど」
リナはページをめくる。そして読み上げていく。
「えーと、ンガバフウドン、ンハボエソウメン……」
「ちょっと待ってくれ」
「なに?」
「最初と最後が『ン』で挟み込まれると怖いな」
「確かに」
「実は魔法の詠唱呪文とかだったりしないか? やばいぞ」
「言いすぎでしょ」
「ンガバフウドン!」
「やめて」
リナは平然としている。
「多分、うどんとそうめんに似た何かだと思うよ」
「名推理だな。読者もメニューを読み返してるだろう」
「メタ発言はもっとやめて。でもさ」
「ん?」
「あんたの食べた異世界まんじゅうよりはマシじゃない?」
「それを基準にするな」
カナタは腕を組む。
「異世界ようかんもあったんだ。そっちにしとけばよかった」
「結局どうするの?」
カナタの後悔を意に介さないリナ。すでに自分はメニューを決めたようだった。
「俺は知ってる名前のやつを頼むよ。メインメニューでだ」
「このメニューにある?」
二人は同時に黙った。
改めてメニューを見る。
「……ボルシチ」
「サイドメニューじゃん」
「ピロシキ」
「サイド」
「それもサイドか。参ったな。2日連続で胃を痛めつけるのは可哀想だろ」
「こだわりを早く捨てろ、って、ことわざにもあるよ」
「ないよそんなの、命令じゃねえか。初めて聴いたし」
そのとき、店員が近づいてきた。
「ご注文はお決まりですか?」
二人は顔を見合わせる。
カナタが言った。
「とりあえず一番安全そうなのを」
「一番安全そうなものですね」
店員はにこやかに頷く。
「では、ンガバフウドンをお2つですね」
「あ、あ、あ、ああ」
カナタが何か言おうとしたが、適当な言葉が思いつかなかったらしい。
店員は行ってしまった。
「どうすんだよ。恐竜みたいな名前の料理が来ちまうぞ」
「イグアノドンみたいな? あはは」
「そうだよ」
「まあ、大丈夫でしょ、あたしはそれにするつもりだったし」
「ええ……? まともなもの食べようって言ってなかったか?」
カナタの願いも虚しく、3分待ったら2つのンガバフウドンが彼らの前に並んだ。
「……見た目からして安全じゃないね」
リナが呟いた。




