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なんなんだこの異世界は、常識ないんか  作者: 嵐山ノキ


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30/40

30.聞き込みの結果だ!

「ではこうしましょう。僕が今夜、幽霊が出ると言われる客室に泊まります」


 カナタの提案に宿の主人はニッと笑った。ほしかった答えをもらえたような仕草だ。


「おお、そうしていただけますか」


「でもカナタ、甲冑姿の幽霊が出るか、黒髪の女の幽霊が出るかわからないんだよ」


「甲冑姿の幽霊ならばすぐに倒す。黒髪の女性の幽霊なら話を聞こう」


「は?」


 リナも宿の主人も、訳がわからないという顔つきをする。


「話を聞く、というのは?」


「黒髪の女性ならば、そのまま僕と一緒に泊まるかもしれないでしょ」


「うわー……」


 明らかにリナは引いている。


「その場合はちゃんと2人分の料金をお支払い下さいね」


 宿の主人は冷静に金勘定を始めた。


「そりゃ無茶苦茶だろ!」


「あんたが無茶苦茶なのよ」


 憤ったカナタだが、すぐさま突っ込みが入る。


「ともかく、女の幽霊をなんとかしていただけるのならば方法は問いません。できれば倒していただきたいのですが……そのために一部屋をお取りしましょう」


「この月影亭には客室が何部屋あるのですか?」


「4部屋ございます。そのうち2部屋は幽霊が出るということで閉鎖しています。こちらのリナ様も泊まられるのでしょうか?」


「え……もしかして、同じ部屋に? あ、あたしは……」


 戸惑うリナ。横目でチラチラとカナタの方を見る。


「リナには別の部屋で待機してもらいます」


 ……安堵したような、期待外れのような、微妙なため息をつくリナだった。


「僕に何かあったら彼女に助けに来てもらいますよ」


「では、リナ様は……そうですね。幽霊の目撃情報がない部屋をお取りします。今日はお客が少ないので、稼働はお二人の部屋だけです」


「調査にとっては好都合ですね」


 あっけらかんというカナタ。


「それでは夜まで時間がありますから、付近の人に幽霊情報の聞き込みをしてきます」


「え?」


「リナはここで主人と話をしながら待っていてくれ」

 

「気まずいからいやだよ」


「それなら仕方ない。ちょっと別行動してこれについて調べてもらって……」


 ごにょごにょと、主人に聞こえないところで二人は作戦会議を始めた。

 

 ……夕方。


 調査を終えたカナタが再び宿の受付に戻ってくる。


 リナも一日動き回ったらしく、少し疲れた顔で座ってお茶を飲んでいた。

 

「街の人たちに幽霊について聞いて回った」


「どうだった?」


 宿の主人も同席し、緊張した面持ちでカナタの話を聞く。


 カナタはボードを取り出した。2つの枠が描かれており、そこに小さな丸いシールが何枚も貼られている。


「甲冑姿の幽霊に会いたいと答えたのが2人。黒髪の女の幽霊に会いたいと答えたが16人で、黒髪の女の幽霊が圧倒的に優位だ」


「調査って、これ希望調査じゃないの!」


 リナの怒りが爆発する。


「いやすまん。これはあくまで予備調査だ」


 不審げな目を向けているリナ。一方、宿の主人は不安そうにカナタの置いたボードを見つめている。


 カナタはボードを裏返すと、そこには箇条書きで判明事項が記載されていた。


「このとおり収穫はあったぞ。甲冑姿の幽霊が見かけられていたのが1か月ほど前。これはリナが見た時期とも一致する」


「そうね……」


「ただ、黒髪の女性の幽霊が現れたのは最近、先週ぐらいからだった。ご主人、それで合っていますか?」


「はい、そうです」


「出現時間は深夜が多いのかと思ったが、安定していない。また、甲冑の幽霊も黒髪女の幽霊も、出た部屋は2階の一室に限定されていた。リナの泊まっていた部屋だ」


 カナタが言うのを聞いて、宿の主人がビクッと背中を震わせた。


「どうかしましたか?」


「いえ、なんでもありません」


「でも不思議ね。さっきは客室は2部屋閉鎖したって言ってたけど」


「わ、私が夜に片づけをしていたら女の幽霊が出たのです! 本当です!」


 主人が慌てたように重ねてくる。


「そうなんですか……わかりました」


 何か釈然としないものがあったが、これ以上詳しく聞ける材料もない。


「では、問題の幽霊が出たという部屋に泊まりましょうか」


 カナタは上階へと歩みを進め始めた。

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