29.幽霊について聞き込みだ!
「今回我々は、この宿に幽霊が出るから退治してほしいという依頼をギルドから受けてやってきたんですよ」
カナタが宿の主人に話をする。リナはその間、ぷるぷる震えたままだ。
「まるでスライムだ」
「誰がよ」
ボソッと呟いたカナタの一言は聞き逃されなかった。
「依頼を受けて下さるのですね。……もしかして、そちらのリナ様もですか」
「もちろんそうです。リナに後ろめたいことなどありません。幽霊退治の依頼を遂行することで、彼女への疑いも晴れることでしょう」
カナタがはっきり言うと、リナは少し感激したような視線を彼に送る。
(カナタ……さっき守ってと言ったときは素っ気なかったけど、やっぱり私のことを気にして……)
「それでは、もし解決していただけたら、依頼料とリナ様の破壊した備品の修理代は相殺するということで」
「いえ、リナの依頼料はそれで構いませんが、僕の依頼料は別でお支払いいただきたい」
「ぐむー」
リナは呻き声を上げた。
「ただ、僕が聞いている幽霊に関する情報が錯綜しており、整理したく思います。詳しく教えてもらえますか」
主人に促されて受付近くのテーブルに3人で座り、話を聞く。
「ええと、一ヶ月ほど前から客室に幽霊が出るようになったのです」
「はい。しかしこちらのリナが見たのが甲冑姿の幽霊、しかし依頼書には黒髪の女の幽霊が出る、とありました。なぜ2種類なのでしょうか?」
「え、いや、それが私にもわからないのです。うん、そうです」
頭を抱える主人。リナはそれを冷ややかな眼で見つめる。
「いずれにしろ、解決方法はすでに僕の頭の中にあります」
「本当ですか!?」
「カナタ、いつの間にそんな名探偵みたいに……」
ふんと鼻を鳴らして、カナタはしゃべり始める。
「幽霊が出るという客室を、閉鎖したらいいですよ」
「……あの、すでにそうしたのですが、隣の部屋に出るようになりました」
「なにっ! ではその部屋も閉鎖しましょう」
「……隣の客室も閉鎖したら、最近はやたらと受付に出るようになりました」
「なにっ! で、ではこうしましょう。受付担当を置かずに、客は箱にお金を入れたら部屋の鍵を持って行けるようにしましょう」
「え……代金をごまかされるのでは」
「幽霊が立っていれば、客も店員かな? と思うはずです」
「防犯になるかな……?」
「ならないでしょ! 何も解決してないし」
黙って話を聞いていたリナがここでツッコミを入れてくる。
「なんなのよこの場当たり的な対策は! しかも最後は幽霊を従業員みたく扱ってるし」
そう言いながら受付の方をチラチラと見るリナ。幸いというか、今は幽霊が現われてはいないようだ。
「有効活用になるかなと思って」
「客室を閉鎖しているのに、活用もないものと存じますが」
宿屋の主人も冷静に切り捨ててくる。
「うー、じゃあこうするか」
カナタが再び提案を始めた。




