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なんなんだこの異世界は、常識ないんか  作者: 嵐山ノキ


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22/43

22.出口付近だ!

「今の気配は……?」


「森の出口の方角、だよな」

 

 何か、不穏な、もっと言えば不吉な気配がした。


 感覚としてはもうすぐ森を抜けられる。手強いモンスターもいたがなんとか倒せた。


 だが、肌にまとわりつく異形の気配。


「これさ、ちょっと聞いて。私が異世界に来る前のことなんだけど」


「おお、どうした」


 リナが小声で喋り始め、カナタとタイスマリーは少し彼女の方に顔を近づける。


「あのね、ここに来る前は私、車を運転してて」


「うん」


 エルフのタイスマリーに車の概念があるのかは不明だが、とりあえずカナタは相づちを打つ。


「家に帰る途中に、信号待ちをしてたの。バックミラーでちらっと見たら後ろにも車が並んでて」


「よくある話だ」


「そしたら、後ろの車の人がなぜかワイパーを凄い速さで動かし始めて」


「雨降ってたの?」


「ううん。晴れてたよ。だから、ウォッシャー液でフロントガラスを洗ってるのかと思って」


「なるほど」


 話が見えないがとりあえず頷く。横をチラリと見ると、タイスマリーも真剣に聞いている。


「でも、ワイパー動かしてる時間がかなり長くてさ。もう15から20往復……? そんなに動かしても意味ないよね」


「多い気はするな」


「それで、どんな人が乗ってるんだろうとそのとき思って、顔を見ようとしたんだけど、ちょうど凄い勢いでワイパーが動いてたから、それに遮られて顔が見えないの」


「うん」


「信号の方をちらっと見たけど、まだ青にならなくて。また後ろの人の方見たんだ。髪の毛だけは見えて、女の人かなって思って」

 

「おお……」


「そしたらちょうどワイパーが止まってさ、乗ってる人の顔が見えたの」


「どうだったんだ……?」


「その女の人の顔に、でっかい穴が開いててさ」


「え? 後ろの座席のシートとかが見えたってこと?」


「ううん、黒い穴。黒い……なんか、何も見えない黒い穴だけが、顔にあるの」


「何それ、怖いな」


「それで思ったんだ。ああ、この人、目とかないから、ガラスがきれいになったのかがわからなかったんだ、って」


「うん……?」


「今、そんな気分だよ」


「どんな気分だよ!」


 カナタが怒りを爆発させる。


 タイスマリーは怒っているカナタの方を見て、怯えた表情を見せた。


「いや、おかしいだろ! なんだよこの話!」


「はっきり見えないと、不気味だよねっていうことを言いたくて」


「は?」


「なるほど、リナさんはその女の人も前が見えないし、リナさんもワイパーで女の人の顔が見えないし、という、両方のことが言いたかったんですよね」


「なんであなたは理解してるんだ……?」

 

 タイスマリーが解説するが、カナタは理解ができずにいた。


 そのときだった。ゾッとする感覚。悪寒がカナタの背中を走り抜ける。


「……?」


 風が止んだ気がした。葉の擦れる音も聞こえない。


 何かから逃れるために姿を隠したように思えた。


 リナが唾を飲み込む音がした。


 タイスマリーは無言で前方を見据えている。少し腰を落とした体勢だ。

 

 視線をゆっくりと前に向ける。


 森の出口の方角。その手前にある大きな木の影。


 そこから赤黒い鱗が現れ出た。


「……っ」


 それは、森にいるはずの存在ではなかった。


 ドラゴンだった。

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