20.森に突入だ!
カナタたち三人は草原を越え、いよいよ森へと足を踏み入れた。
空気が一段、ひんやりとする。
鳥の声は聞こえるが、どこか遠い。まるで森の奥に吸い込まれているようだった。
日の光は木々に遮られ、地面にはまだらに影が落ちている。つまりなかなか暗いところがある。
「森のモンスターは、さっきのネズミより強いのかな?」
「たいしたことなければいいよね」
「うわあ、石につまずいて足を捻った!」
カナタがいきなり体勢を崩し、その場にしゃがみ込む。
「気をつけてよ!」
リナが駆け寄ろうとするが、カナタは手で制した。
「これぐらい大丈夫……うわっ! 今度は蜂に刺された! 痛え!」
「森の脅威、地味に多いですね……」
タイスマリーが少し引き気味に呟く。
「くっそー、思ったより手強い森だぞ。気をつけろ」
「本筋と違うところでダメージ受けないでよ」
リナは呆れ顔でため息をついた。
軽く腫れた手を気にしながら、カナタが先頭を歩く。
後ろをリナ。間に護衛対象のタイスマリーが入る隊列だ。
「あっ、そこの木の根元にスライムがいるよ!」
カナタが足を踏み出そうとした先、木の根と見分けがつかない茶色の塊が、ぬるりと動いた。
「名前は根這いスライムだよ!」
「情報は今度でいい!」
スライムはゆっくりと、しかし確実にカナタの足へと伸びてくる。
「うわあっ」
反射的にブーツで踏みつけた。
ぐじゅり、と嫌な感触。続けて、グジョゴジュボジョモオンという妙に長い音が響く。
スライムは体を震わせるようにして、光となって消えた。
「1回しか踏んでないのに、ずいぶん長い音がしたな」
「表面にいくつもプチプチみたいなのがあって、全部潰したとか」
「そうなのかな? あまりすっきりしなかったな」
微妙な空気のまま、次の気配が現れる。
視界の端で、何かが揺れた。
立ち上がったのは巨大なキノコだ。
傘の下に不気味な口を開け、カナタへと飛びかかってくる。
「キノコ型モンスターだ! 毒や胞子に気をつけろ!」
「こいつ前に見たことある! 大気中の電気を集めて雷攻撃してくるよ!」
「うわっ! なんでキノコが電撃!?」
1分後。
「ふー、なんとか倒したね」
「あっ、今度はイノシシ型モンスターが来たぞ! 体当たりに気をつけろ!」
「こいつは口から凍った息を吐いてくるよ!」
「もっと特徴を活かせよ……」
突進してくるイノシシの口元から、白い冷気が噴き出していた。
森に棲んでいるイノシシがなぜ氷のブレスを吐くのか、全くわからない。
立て続けに見た目と能力が合っていないモンスターを見て、カナタの認知が追いつかない。
それでも再び剣を構えた。
森の奥は、まだ見えない。何かがおかしい。




