19.初勝利だ!
エルフのタイスマリーから護衛の依頼を受け、カナタたちは朝から出発する。
目的地はデブレイの街。草原を抜け、問題の森を越えてようやく辿り着く。
「よろしくお願いしますね。草原はあまりモンスターも強くないはずですので」
タイスマリーが改めて丁寧に頭を下げた。
「そう願います。なにせ我々レベルが低いもので、げへへ」
「なんで急に下っ端みたいな笑い方になるのよ」
すかさずリナのツッコミが飛ぶ。
「いやほら、こう……低姿勢アピールというか」
「誰に向けて?」
「モンスターに?」
「効くわけないでしょ」
軽口を交わす二人を見て、タイスマリーはくすりと笑った。少しずつ空気が柔らいでいる。
今回の行程は、今日中に目的地へ到着して現地で一泊。翌日に帰還する予定だ。
だが問題は、その途中にある森だった。
無事では抜けられない。そんな話を、ギルドで何度か耳にしている。
「いやあ、いよいよモンスター出てくるんだろうな。緊張するな」
そう言いつつも、カナタの声にはどこか楽しげな色が混じっていた。
「楽しそうに言うなあ……」
リナは呆れつつも、弓を構え直す。視線は常に周囲へ向けている。
「剣を使うんだね。あたしは弓で援護するよ」
「メインスキルのレベルが上がるまでは、剣でやるしかないからな」
「早く水で攻撃できるようになりたいなあ」
「俺が前に言った、洗面器使えばいいじゃん」
「溺死狙いはしないって」
そんなやり取りをしていると、ガサリと草が揺れた。
「来た!」
現れたのは、灰色の毛に覆われた大型の鼠。しかも二匹。
「うわっ、でかい灰色の鼠だ」
「灰色ネズミね!」
リナは迷わず弓を引き絞る。
ヒュン、と風を切る音とともに放たれた矢は、正確に一匹の背へ突き刺さった。
「よしっ!」
ネズミはそのまま地面に転がり、光となって消える。
「もう一匹はそっち!」
「うお、おおおっ!」
カナタは反射的に剣を振る。
ちょうど飛びかかってきたネズミの腹に刃が食い込み、そのまま斬り裂いた。
感触が手に伝わる。遅れてネズミの体が崩れ、同じように光となって消えた。
「……倒した」
カナタはしばらくその場に立ち尽くす。
「初勝利だ」
「おめでとうございます」
タイスマリーが小さく拍手を送る。
「いや、なんか……思ったよりいけたな」
「意外となんとかなるよね」
リナも同意してくる。視線の先には森の影があった。
木々が密集しており、奥は暗そうだ。
「この調子なら、森のモンスターも倒せるんじゃないか?」
「えー……」
カナタの楽観に対し、リナはあからさまに顔をしかめた。
「ステージが切り替わったらモンスターも違うのが出てくるもんでしょ」
「そうだよな。森の外から行くか?」
カナタがチラリとタイスマリーの方を見ると、地獄のように険しい顔をしている。何がそんなに気に入らなかったのだろうか。
「よし、頑張って森を抜けよう」
怖いので振り向かずに進み始めた。
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