16.新しいギルドだ!
スキル精霊によってスキルを付与された二人は、街まで戻ってきた。
石畳の道を踏みしめながら、カナタは空を見上げる。さっきまでいた場所が妙に遠く感じられた。
「思ったより順調だったね」
「そりゃ、リナの水を出すスキルは使いどころが多そうだけどさ」
「うん……」
一瞬、リナの表情が曇る。
「カナタは溶岩の上を歩けるから、何だっていう話だよね。バカかと思うよね」
「言いすぎでない?」
さすがにムッとした表情のカナタ。
だが、否定しきれない自分もいるのが少し悔しい。
「いやでも、溶岩って普通そこら辺にないしさ……」
二人の間に、微妙に現実的な沈黙が落ちる。
「……まあいいか。時間もあるし、ギルドへ行って何か依頼がないか探そうよ」
「そうだな。いよいよモンスター退治できるかも」
さっきまでの微妙な空気を振り払うように、二人は歩き出した。
「そういえば、リナのスキルでどうやって戦うの?」
「え?」
ぴたりと足が止まる。
沈黙。
さっきとは種類の違う、致命的な沈黙だった。
カナタはこれまでの人生で得たファンタジーやゲームの知識を総動員して考える。
(水って……どう戦うんだ? 投げる? ぶつける?)
一方のリナは、精霊にもらった分厚いスキル説明本を取り出し、ぺらぺらとめくり始めた。
「うーん、スキルレベルが上がったら、水圧で攻撃できたり押し流したりできるはずなのよ」
「はず、って?」
「書いてあるのは、強力になるよってことだけ」
「こんなに分厚い本なのに、そこがふわっとしてるのか……」
ページをめくるたびに、不安だけが増していく。
街に戻ってから軽快だった足取りが、じわじわと重くなっていく。
「そうだ、リナが洗面器を持って歩いてさ」
「は?」
「水を張って、そこにモンスターの顔を押しつければ――」
「なんであたしだけ拷問みたいな戦い方なのよ」
「似合いそうかと思って」
「どこがよ!」
即座にツッコミが飛ぶ。
「ドラゴンの首を持って洗面器に押しつけられないでしょ」
「それは……無理だな」
「でしょ!」
勢いよく言い返しながらも、リナは小さくため息をついた。
「やっぱり、スキルのレベル上げが肝心か……」
「だな」
カナタも同じ結論に至っていた。
水を出せるスキルが、このまま水がちょろちょろ出るだけで終わるとは思えない。水の力は強い。使い方次第で、いくらでも武器になるはずだ。
(コンクリートだって削るしな……)
ふと、カナタの頭に一つのイメージが浮かぶ。
「ん……?」
「どうしたの?」
「いや……水ってさ、温度も変えられるようになったら――」
思考が少しずつ形になりかける。
「出せる水が温かく……いや、もっと熱く……?」
何かに手が届きそうな感覚。
だが――
「あ! ここだよギルド!」
リナの声が、それをあっさりとかき消した。
「あっ」
霧が晴れるように、考えが消える。
「……今、何か思いつきそうだったんだけどな」
「あとで思い出せばいいじゃん。それより見て、結構人いるよ」
視線の先には、賑わう建物。
冒険者たちが出入りし、掲示板の前には人だかりができている。
「そうか。前のギルド【闇】には入らないことにしたんだもんな」
「うん。今度はちゃんとしたとこ選ぼうね」
「普通はちゃんとしてると思ったんだが」
「少なくとも、名前に【闇】ってついてないところ」
「それはそう」
二人は顔を見合わせ、小さく笑った。そして新しいギルドの扉へと歩み寄った。




