12.スキル精霊の家だ!
「ここがスキル精霊のいる森だよ」
「おお、なかなか深そうな森だな。大規模な針葉樹林って感じか」
北欧を思わせる尖った葉を付けた木々が規則正しく並んでいる。
暖かな季節なのに、どこか寒々しさを感じさせる森だ。空気がひんやりとしている。
踏みしめる地面も柔らかく、足音が妙に吸い込まれる。
カナタは周囲を見回し、小さく息を吐いた。
「研究者[誰?]によると、昔から[いつ?]精霊は人に見られるのを嫌うはず。砂漠や孤島、峡谷といった人の訪れが少ない場所にいるものと言われているけど[誰によって?]……」
「どうしたの、急にwikipediaの編集不足のページみたいなしゃべり方して」
リナがきょとんとした顔で突っ込む。
「出典が必要そうなこと言うのやめて」
「ああ、ごめんごめん。なんかそれっぽいこと言いたくなって」
カナタは咳払いしてごまかした。
確かに雰囲気はある。いかにも何かがいそうな場所だ。
精霊までの道のりは、平坦ではないのだろう。
緊張で顔がこわばった。
「そしてここがスキル精霊の家」
リナが指差した先にあったのは、木でできた小さな小屋だった。
あまりにも自然に溶け込んでいて、言われなければ見逃していたかもしれない。
「え、これ?」
思わず声が漏れる。
「これ」
「え、今から森を探索して、奥地にある神殿的なところに行く流れじゃないのか?」
「でも森の奥に家があったら、買い物とか不便じゃない」
「精霊が買い物に行くのかよ……」
買い物カゴを持ってレジに並ぶ精霊の姿を想像し、カナタはなんとも言えない顔になる。
「おじゃまします」
リナはためらいなく小屋の扉を開ける。
中は意外にも整っており、簡素ながらも清潔感があった。
木の香りがほんのりと漂っている。
「予約のリナですが」
「はい、お待ちしていました」
(予約制だったのか)
カナタは内心で突っ込む。
突っ込むべきポイントは多いが、いちいち口にしていたら進まない。そう判断し、黙ってついていくことにした。
青白い光をまとった存在が静かに浮かんでいる。
人の形をしているようで、どこか輪郭が曖昧だ。
足元には淡く輝く円環があり、そこから姿が投影されているようにも見える。
本体は別の場所にある。そんな印象を受けた。
「いや、それだとやっぱり買い物に便利な家とか関係なくない!?」
ついに我慢できず、声に出してしまった。
「実は私たちにスキルを付与してもらいたいのです」
「はい。最初のスキルは無料で付与できますよ」
リナと精霊は、何事もなかったかのように会話を進めていた。
完全に置いていかれるカナタ。
「ただ? それはありがたい!」
慌てて話に乗る。
だがリナは壁に貼られた紙を指差した。
「でもスキル変更には10000Gかかるよ。それに、変更すると前のスキルは消えるって」
「高いし、リスキーだな」
カナタは思わず眉をひそめる。
やり直しが効かないタイプの仕様らしい。
「でも、10回スキル変更したら、1回はAランクのスキルになるって」
「ガチャの保証システムじゃん!」
思わず叫ぶカナタ。しかもSでなくAランクだと、さほど割のいい取引でもない。
精霊は静かに微笑んでいるように見えたが、それが肯定なのか否定なのかはわからない。
ただひとつ確かなのは、ここで手に入る力は運にも左右されるらしいということだ。
カナタはごくりと唾を飲み込む。
いよいよ、自分の最初のスキルが決まる。
期待と、わずかな不安が胸によぎった。




