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役目を終えたオカン系勇者の現実スローLIFEはままならない  作者: ほしのしずく


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第9話 手続き完了

 とち狂っていたカルファが天誅を受けたことで、当初の目的であった住民登録もスムーズに進み、トール率いる勇者一行は宏斗から最後の注意事項を聞いていた。


「――おしっ、色々と話が逸れたが、これで住民登録完了だな! もう一度説明するが、守ることは五つ。一つ、不要意に魔法を使わないこと。二つ、働くこと。三つ、魔法を見られた場合、すぐさまこの俺に連絡すること。四つ、納税すること。五つ、楽しめ! 以上だ! あ、三つ目の猶予は一日だからな! じゃないといくら俺でも対応出来ない!」


「わかりました。覚えておきます。が! 先程のトール様はこの規約に引っかかるのでは?」


 正座で反省を促されていたカルファも目的だった住民登録を終えたことで、いつも調子に戻り、応接のソファーに座っている。


(カルファの指摘はもっともやな……やけど――)


 冴えわたる思考に感心するトール。


 だが、間違いなく言える立場ではない。


「ド正論や……けど、自分には言われたくないわ! 僕だって好きで魔法つこてないし。そもそも君らがおらんかったら、使うことなく日本でほのぼの過ごせてたはずやねんで?!」


 一番言われたくない相手からの指摘に、思わず語気を強める。カルファはそれが悲しかったようで目を潤ませた。


「そんなにキツく言わなくてもいいじゃないですか〜!」

 

「キツく言うてない、事実を述べただけや!」


「トール様が冷たい……あれですよ?! 勇者が根に持つとか、印象よくないですよ? だから、ほら笑顔でにっこり――」


 これが火に油を注ぐということ。

 さすがのトールも眉間にシワを寄せたまま言葉も発しようともしない。


「カルファよ、やめておけ。今回もお主が悪い」


「ううう……」

 

「コホン、仲間が取り乱してしまいすまんの。儂も承知した」


「いや、気にするな! 俺は普段の、ありのままのトー坊を見れて満足だからな」


「ガ、ハ……ハハー……そ、そうか……それなら良かった」


 カルファが言った男色の話が頭にこびりついているのか、ドンテツは苦笑いを浮かべる。


 その反応を見て、瞬時に理解したトールは宏斗に釘を刺す。


「ヒロおじ……さっきの話からのその答えは誤解招くからやめてもらっていい?」


「ん? 何がだ?」


 だが、残念なことにその宏斗自身が何も気にしていない。いや、気付いてさえいない。


 というか、普通は気付かない。


「はぁ……」


 そんな宏斗にトールはため息を漏らし頭を抱えた。


 すると、ひとりでに落ち込むトールが心配になったようで、チィコが顔を覗き込んだ。

 

「トールどしたの? 頭痛いの?」


「ううん、大丈夫やで。ちょっと呆れただけや。そうや、チィコはこの話わかったか?」


「うん、わかったよー!」


「そうか、そうか。そんなら良かった」


 純真無垢なチィコの存在に少し救われたトールであった。 


 ☆☆☆



 無事登録を終えたことで、トール以外の勇者一行は応接用ソファーを立ち、市長室の入り口付近で自分達の行きたい場所について花を咲かせていた。


「ヒロおじ、ありがとうな。手間かけた」


 トールは仲間達のはしゃぐ姿を横目で捉え、顔緩ませる。


「おう! って……今、なんて言った?」


「……二度も言わんって」


「いや、そこは素直になろうぜー! ほら、もう一回!」


「うっざ。僕ら用済んだし、帰るわ! 皆それぞれに行きたいところあるし」


 耳を赤くしながら、転移魔法を発動すると会話を弾ませる三人の元へと近寄りそして消えた。

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