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『竜の子』 〜冒険者に憧れるおっさん全裸で異世界に転移する〜  作者: スメコ


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第八章


「厄災死んだ」

「死んだ」


ミスリルの洞窟。

魔竜の死骸を前にしている。


「小さな王、いる」

「王、いる」


「あそこだ」

一体が指を差す。


「剣だ」

「剣だ」


「剣、小さな王、いる」

「小さな王、いる」


「抜け」

「抜け」


「抜けぬ」


「抜けぬ」


「王、伝える」

「伝える」


「厄災死んだ、飛ぶ」

「飛ぶ」


コウモリのような羽を広げ、飛び立った。


――――――



「完全に遭難した」

レイシアが呟く。


この3日間、何とか魔物との遭遇を避けながら森を進んできた。

昼でも木々が陽光を遮り、薄暗い。夜に空を見上げても大木が星を隠している。

星が見えない。

方角がわからない。


「東へ向かっていることを祈るしかない」


歩きながらテンと色々な話をした。

当初自分の話題は避けていたレイシアだが、次第に警戒心は薄れ、お互いのことを少しずつ話すようになった。


王国騎士団団長として部隊を率い、魔竜山脈を西へ抜け、未開の地の探索と、魔竜の眠る洞窟から大量のミスリルを持ち帰る命令を受けていた。

と森に来た経緯を語った。


「全滅したんですね......」

天太はなんとも悲しそうな表情をした。


ダンジョン探索で冒険者パーティーが全滅することは珍しくない。

自身も命からがら逃げ帰ったたことが何度もあった。


天太は森で食べられるものをよく知っていた。


王国騎士団は基本的に部隊行動だ。

目的地までの村々で補給を行うため、食料に困ることはほとんどない。


だからレイシアは、野草や木の実の知識など持っていなかった。


ちなみに料理もしたことがない。


「レイシアさん、あれ」

声を潜め、身を屈める。


少し先、木々が切り倒され森が開けていた。


後ろから覗き込んだレイシアの表情が険しくなる。


「オーク......」


オークの村だ。

となれば、周囲を見張りが巡回しているはず。


まずいな......

あいつらは鼻が効く。


「テン。ここはおそらく巡回範囲の内側だ。先に気づかれると仲間を呼ばれる」


「こちらが先に見つけるか、運が良ければ見つからずに抜けられる。来た道を戻ろう」




「運はないと思います......」

後ろを指差す。


「二体一組とは、本当に運がないな」


20mほど先、二体とも斧を持っている。

風は吹いていないが、そのうち匂いで気づかれる。


「先制攻撃。二体同時に倒すのが理想だ」


ゆっくりと剣を抜くレイシア。

天太は自作の木の槍だ。


ゆっくりと近づく。


(オーク...裸...怖いな...)


たぶん腰布はすぐに脱げてしまうだろう。


おそらく槍を投げれば一体は倒せるだろう。

しかしそれではもう一体に仲間を呼ばれる。


オークたちが目の前を通り過ぎ、背を向けた瞬間。

「いくぞ!」

抑えた声、しかし迫力がある。


二人はそっと立ち上がり走り出す。


いける!

レイシア、地を蹴り飛び上がる。

全体重を乗せ、振り下ろす。


天太、槍をオークに向けたまま突進。


レイシアの剣はオークの頭を胴体から切り離した。


「グァッ?」

天太の左肩はオークの背中に触れている。

(小さいやつで良かった)


天太はまた全裸になっていた。


「グァーーーッ!グァッーーーー!」


「なに!?しまった!」


三体目が雄叫び。

さながら警報だ。


斧を振り上げたオークが突進してくる。


「テン!それを使え!」


落ちている斧を目で示す。


「はい!」


斧を拾い上げる。

(軽いな。もう一本も貰おう)


剣を構えるレイシア。


(また小柄なヤツだ。)

「レイシアさん、俺がやります」


「うおおおお!」


両手に斧を持ち、突っ込む。

オークが怯んだ。

自分より大きな人間が向かってくる。

防御に切り替え、斧を横に構えた。


バンッ。

爆発音。


オークは斧ごと三つに割れた。


(えぇ......)

レイシアは目を丸くする。


「ん"ん"ん"ん"ん"。」

まただ。

痛みが天太を襲う。


「テン、くるぞ!やるしかない!」


雄叫びを聞いたオークたちが集まり始めている。


「ここのオークは小さいようですね!俺が前に立ちます!」


(お前がデカ過ぎるんだよ)


「よっしゃあ!かかってこい!」

痛みが引く。

軽い。

羽でも生えたようだ。


「うぉぉぉお!」


両手の斧を振り回す。


オークの武器を粉砕し、立木ごと吹き飛ばしていく。


掠るだけで致命傷。


「む、無茶苦茶だ......」

近づけば自分も危ない。

レイシアは距離を取り、倒れたオークにとどめを刺す。


時折り


「ゔゔゔーーーっ」


「痛いーーーっ!」


と叫びながら暴れ回る全裸男。


何体か倒すと斧が壊れる。

また別の斧を拾う。


30体ほど倒したところで、オークが逃げ出した。


(また大きくなっている......)


「もはやお前が魔物だな」


静かになった森、股間を両手で隠す天太にレイシアが引き気味に言った。


「肩を見せろ」


しゃがんで背中を向ける天太。


左肩から肩甲骨の下、上はアゴの少し上にまで広がっている。


「私のを見ろ」


天太の前に回り服をまくる。

思わず目を背ける。


「早く!」

レイシアは恥ずかしそうに斜め上を向く。


「痣が......」


自分と同じ、薄い青の痣だ。


川で見てしまった時、火傷の跡か何かだと思っていた。


「そうだ。私たちはこの痣がある者を"痣持ち"と呼んでいる。この痣は強さを表す。痣持ちでなければ兵士にはなれない」


「強くなればなるほど痣は広がっていく。だがお前にはなかった。普通は生まれた時に確認される。場所は様々だが痣があるか、ないかで進む道が決まる。後から現れることはごく稀だ。」


天太を見上げる。


「だぶんお前の痣は勇者のものより広い。それに......身体が大きくなるなど聞いたことがない......」


「大きく?」


「あぁ、今のお前、2メートルは超えているぞ」


「えぇ!僕175cmセンチですよ......」


突然森へ転移したせいで、比較対象がなかった。

視線の高さの変化に気づいていなかったのだ。


「たまに身体がメキメキ鳴って......めっちゃ痛いんです。でもその後すごく軽くなって.......」


(不思議なヤツだ......)


ふと視線を天太が捨てた斧にやる。

柄が握った跡で深く凹んでいた。


「逃げたやつらが仲間を連れて戻ってくるかもしれない」


レイシアが立ち上がる。


「出発だ」


天太が腰布をせっせと巻きはじめた。


挿絵(By みてみん)





第九章に続く。


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