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『竜の子』 〜冒険者に憧れるおっさん全裸で異世界に転移する〜  作者: スメコ


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第4話

 リズは、帰還から一月——王立図書館に籠り続けていた。


 魔竜に関する書物を、片端から読み漁る。


 一冊の本が目の前に。


 外装は色褪せ、中身も破れがひどい。


 それは魔竜とは関係のないコーナー、魔法関連の棚に置いてあった。

 人間の言葉で書かれてはいるが、少し現代の言葉とは異なるようだ。


 書かれた年は......


 うっすらと浮かぶ数字、太陽暦1756年。


 今から約2000年前...


 ページをめくると最初に挿絵がある。


 小さな竜と少女が描かれている。


 歳は10〜14歳ぐらいだろうか。

 その少女の肩に竜が乗っている。

 少女と竜はとても仲の良さそうな雰囲気だ。



 "キュウセイシュ...ミツハ..."



 その挿絵の下にはそう書かれている。


(キュウセイシュ...。救世主?)


 リズはさらにページをめくる。


 三角の頭巾を被り、マントを羽織った魔法使いのような人間が十二人。

 円になり、中央に向かって両腕を広げ、開けた両手の指は折れ曲がり、宙を掴んでいる。


 中心には石のような......


 カットされており宝石のようだ。


 次のページは丸ごと破れている。


 その次は縦半分がない。


 ページの下部には "ユウシャショウカ......"


 続きがあるようだが破れていて読めない。


 数ページ飛んで、そこには石の破片のようなものが描かれている。

 さっきの宝石だろうか。


 後のページは汚損がひどく、絵や文字が判読できない。


 最後のページ、かろうじて読めたのは


 "ショウジョトシュゴリュウ、マオウヲニシノカナタ"



 魔竜に関する文献を読み漁ってわかったことがある。


 かつて守護竜と呼ばれる存在があったこと。


 そして人間を長く苦しめてきた魔竜。


 魔竜の邪悪な魔力は魔物を生み、また人間が魔竜山脈より西に行くことを阻んできたと。


 守護竜に関する書籍は少なく、あったとしても古すぎてほとんど判読できなかった。


 "マオウヲニシノカナタ"。


(魔王を西の彼方?)


 そういえば昔。


 150年ほど前...エルフの長老に聞いたことがある。

 魔王と人間の長きにわたる戦いを。


 魔王は魔族を従え、人間とエルフの地を奪おうとしていたと。


(もし、仮に、この守護竜が竜王と同一であるならば......ある日を境に邪悪な竜に転身した。もしくは......)


 はっとする。


 魔竜の最期の言葉。


 アリアに向かって "待っていた" と言った。


 "滅亡"


 私たちのことを言っていたのか......?


 私たちは重大、いや、危険な勘違いをしているのかも知れない。


 もっと調べる必要がある。


 そしてそれはアリアに大いに関係するかも知れない。


 "ユウシャショウカ"

 とは何か......


(皆を呼ばなくちゃ)



 すぐに来て。あの場所で。


 リズは手紙を書き、伝書鳩に託した。



 首都を出て七日目の朝、アリアは無事に故郷に帰った。

 村の入り口には横断幕が。


 "おかえりアリア!村の英雄!"


 その日は盛大に祭りが開かれた。


「あぁ!アリア!お帰りなさい。話を聞かせて!」

 翌日、母の開口一番。


 昨夜遅くまでの宴会。

 両親とはろくに話もできていない。


「疲れているんだ、また今度にしなさい。5年ぶりだね、会いたかったよ。おかえり」

 父の言葉に少しホッとするアリア。



 朝食を囲む。


 あぁ、美味しい。


 ふと、部屋の十字架にかかっている首飾りのひとつに目がいく。

 今まで気にしたことがなかった......


 物心ついた時からずっとそこにある。


 立ち上がり首飾りを手に取る。

 先には木製でまるく、手のひらほどの面に竜の模様が細工してある。


「お母さん、これって......」


「あら、言ってなかった?これはあなたのおばあさんに貰ったものなの。おばあさんもそのお母さんから貰ったらしいわ。」


「でもこんな模様だし、付けるわけにもいかないし......捨てるのもなんだか、ね......」


 確かに。

 この世界で竜といったら魔竜しかいない。

 いや、いなかった。


 こんなものを付けていたら何を言われるかわかったもんじゃない。


 今日は教会に行ってみよう。


――


 神父は快く迎えてくれた。


「やあ、昨日はお疲れ様!さすが神のご加護を受けた英雄だ。早速来てくれたんだね!」


 中に入り祭壇へ、十字架に祈りを捧げる。


 あ、ここにもある。


 幼い頃からこの教会に通っている。

 見慣れすぎていたのか、まったく気にならなかった。


 十字架の下部に竜が彫ってある。


 家で見たのと同じだ。


「神父さん、これ...」


「あぁ、これはね。以前気になって調べてみたんだ。前の神父様にも尋ねに行ってみたよ。あまり詳しいことはわからないけど、この村に教会が建つ前、村人は竜を信仰していたみたいなんだ。500年ほど前らしいよ。」


「竜を信仰......」


「そう......」

 神父は少し考える仕草をした。


「特別に君に見せよう。ついておいで」


「はい......」


 神父は教会の奥へと案内する。


「ここはずいぶん前から物置きになってるんだけど」

 小さな扉を開く神父。


「これもずいぶん古いのだけど......」


 木彫りの少女。

 肩に小さな竜が乗っている。


 等身大だろうか、十代前半に見える。


「埃まみれで可哀想だね」

 神父。


「何か書いてありますね」


 アリアが少女像の足元、土台の埃をはらう。


「ミ...ツ...ハ...シュ、ゴ...リュ、ウ」

 声に出して読んでみる。


「どういう意味だろうね。それにしても、見比べてみると君たちよく似てるね!」


 像とアリア交互に視線をやり、神父はそう言って微笑んだ。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)



 第5話に続く。

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