第38話
ヴァルディア王との謁見を終えたリオン。
長い廊下を渡り、城を出ようと歩く。
「リオン殿」
柱の影から呼ばれた。
「君は......」
「セリーン様の使いです」
「 "耳"......かい?」
「......その通りです」
「で、何の用だい」
腕を組み、柱に背を預け、リオンが問う。
「この城に、騎士団長レイシアが捕えられております」
「レイシア......」
何度も剣を交えた。
確かセリーンの幼なじみだったな......
行方知らずになっていた......
「昨日のレイバーンを落とした影。あの背に乗っておりました」
「なんだって!」
「......それで、どうして捕まったのか、わかるかい?」
「恐らく政局に巻き込まれたかと」
「政局......」
今までの人生、そんなものに関わったことはない。
「で、セリーンは僕に何を......」
「とにかくお伝えしろと」
少し考えるリオン。
「わかった。レイシアに会いたい。何とかできるかな?」
「やってみます」
―――
副議長ローヴェン......
オルディス様不在をいいことに......
オルディス家の後ろ盾のひとつ、ヴァルグレイン家を落とし、新たに、自身の息のかかる貴族から騎士団長を任命するはず。
阻止せねば。
一年のほとんどを城で過ごす騎士団。
当然、王とその家族との関係は、密になる。
クレイスは考える......
......恐らく......ローヴェンは今回の襲撃事件の全責任をレイシアに押し付ける気だな......
悪くて処刑、良くて国外追放。
そして.......ヴァルグレイン家の名誉は地に落ちる。
消すか......
いや、それでは解決にならない。
そして......レイシアを助けるだけでは足りない。
ローヴェンの求心力そのものを削がねばならない。
何か大きな事件が必要か。
なければ起こすまでだ…..
――
「リオン殿」
城の庭園で待つリオンに声をかける。
「ああ、行けるかい?」
「こちらへ」
クレイスは庭園を抜け、城の南側に案内する。
屈んでやっと入れる扉を抜け、低く狭い、暗いトンネルを進む。
「少しお待ちを」
クレイスは辿り着いたもう一つの扉をゆっくりと開け、中に入った。
幸いにも見張りは一人。
牢から離れ、背を向けている。
レイバーン襲撃でどこも人手が足りていない。
......音もなく衛兵に近づく。
粉を握った右手を開き、衛兵の耳元にそっと吹きかける......
少しして崩れ落ちる衛兵。
そっと抱きかかえ、床に寝かせる。
全く気づいていないレイシアを横目に扉へと戻った。
――
「見張りの交代はありません」
「なので、今日中に動きがあると思います」
「私は入って来た扉におります」
矢継ぎ早に、それでいて要点だけを。
“耳” は淡々と話した。
何と言う手際の良さだ……
リオンは思わず感心した。
――
「リ、リオン!」
「やあ、レイシア。久しいね」
「どうやってここに......?」
驚いたレイシアが尋ねる。
「セリーンに頼まれたんだ」
「セリーン......」
「ゆっくりしていられないから、手短に聞くね。君に何があったんだい?」
第39話に続く。
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