第37話
「下がってください!ここは立ち入り禁止です!」
北門、衛兵詰所には、人の言葉を話す巨大な青いゴブリンを見ようと、人だかりが出来ていた。
「あ!勇者様だ!」
一人が叫んだ。
「勇者様方、何か御用でございますか!?」
衛兵が駆け寄る。
「あぁ、あいつに会わせろ」
ガルドが低く唸る。
「は、はい!今すぐに!」
迫力に圧された衛兵が群がる人々を押し除け、勇者たちを中に通した。
檻の中、うずくまる広く大きな背中が見える。
「我らだけにしてもらいたい」
ガルドが唸る。
「は、はい!皆出ろ!」
兵長が指示を出す。
「大きいわね......」
セリーンが口を開く。
「おい!話せるのか!」
ガルドが檻を叩いた。
「ちょっと!やめてあげて!」
アリア。
リズがガルドの腕に触れる。
ゆっくりと振り返る巨人。
「な......」
ガルド、喉が詰まる。
全身に鳥肌が立つ。
セリーン、アリア、リズも同様だ。
なんて強さだ。
計り知れない。
魔竜の比ではない。
今すぐ逃げろ、と全身が警告を発している。
「僕は......人間です......」
唖然とする一同。
ガルド、一瞬で口が乾き、まばたきさえもできない。
よく衛兵が連れて来られたな......
いや、存在があまりにも掛け離れ過ぎていて、何も感じなかったのか。
――
しばらくの沈黙のあと、アリアが口を開いた。
「ご......ごめんなさい。悪気はないの」
「私はアリア。勇者パーティーの一員よ」
「勇者......!?」
巨人は少し胸が躍り、立ちあがろうとする。
「おぉっ!」
全員が後ろに下がる。
「あ、ごめんなさい」
謝る巨人。
腰に巻いているのはベッドシーツか。
しかし、何という圧力......
「だ、大丈夫よ。あなたが凄すぎて、みんな驚いているの」
アリア。
「お名前を教えていただけないかしら」
「天太です。レイシアさんからはテンと呼ばれています」
「レイシア!」
セリーンが声を出す。
「あなた、テン、レイシアといたのよね!」
「私はセリーン。レイシアの幼なじみよ!」
「そうなんですか!」
テンが続ける。
「レイシアさん、僕の服を探しに行ったきり、戻ってこなくて......」
「そ、そうなのね......」
テン......この人?が着られる服はないだろう......
皆が思った。
「昨日のレイバーンを落としたのはお前か」
ガルド。
「はい、皆に当たらないよう注意したのですが、なぜか、火に焼かれてお城を壊しちゃいました......」
「弁償しないとダメですよね......お金が......」
たぶん、それが捕まった理由ではないぞ。
皆が思う。
「ごめんなさい。その火は私の魔法だわ」
「え、魔法!?」
テンが目を輝かせる。
「......服とか出せたりしませんか?」
「ごめんなさい......それはできない」
セリーンが応える。
――
テンは傷ついていた。
公衆の面前、全裸で連れてこられた。
道ゆく人々が皆、指を差し、子どもからは石を投げられ......
そして全身をくまなく検査さた。
くまなく、だ。
せめて服をと懇願するも、聞き入れてもらえず檻に放り込まれた。
小さ過ぎるベッド。
そのシーツを剥いで腰に巻く。
正直泣いていた。
――
「その、青い身体は......生まれつき、なの?」
アリアが尋ねる。
「いえ、最初はなかったんですが......レイシアさんが痣だと言ってました」
「!」
「痣が広がったの!?」
セリーンが驚いた声を出す。
「そうなんです」
「それが痣なら......とんでもねぇ......」
ガルドが唸る。
「新しいのも出てきました」
そう言ってテンは左肩から腕を見せた。
「???」
肌色......新しい?
皆理解が追いつかない。
「身体もどんどん大きくなっていたんですが、最近は縮んでます......」
「???」
全く理解できない......
「そ、それはそうと......」
セリーンが口を開く。
「レイシアは捕まってしまったわ。城に囚われているようなの」
「え!何でですか!?」
「わからないわ。調べてる」
セリーン。
「それで戻って来なかったのか......」
――
テンはレイシアとの出会いから今まで、全てを話す。
皆驚き、聞き入っていた。
「光......勇者召喚......」
リズが砂で描いた。
しばらく沈黙が流れる。
――「テン、誰も傷つけずにレイシアを取り返せるかしら」
セリーンが言った。
「レイシアさんのためなら!なんでもやります!」
「少し待ってて!」
セリーンが出て行く。
――
「衛兵長さん」
「セリーン様!」
「あなたお名前は?」
「ロン、ロン・カーンと申します」
「ロン!いい名前ね!ところで、あの男の罪状は何?」
「えぇと……正式な罪状はまだ……」
「ですが、身元不明の危険人物として拘束しております」
「実はね......オルディス家の客人だったの」
「え!」
「こちらの出した迎えと行き違ったみたいで。ほんと彼には悪いことをしたわ......」
「......そ、そうなのです、か.....」
「このまま引き取っていいかしら......ロン......そうしてくれたら、オルディス家はあなたにとーっても感謝するわ」
「は......はい!表は人だかりですので、裏口からどうぞ......」
「ありがとうロン!」
「オルディス家は恩を忘れないわ」
誰38話に続く。
面白い!と思ったらブックマーク、評価をお願いします。




