第35話
後ろ手に、鎖を繋がれたレイシア。
――
ヴァルディア王都壊滅の怒りはレイシアに向けられていた。
崩れたヴァルディア城内、軍事法廷。
レイバーン襲撃を生き延びた王と元老院、大臣がレイシアを見下ろす。
王都を出て70日間。
連絡を一切途絶え、たった一人での帰還。
首都壊滅の責任。
その所在を探していた者にとっては、最適な人物。
それがレイシアであった。
「部隊を壊滅させ、一人生き延びるとは!」
「恥ずべきだ!」
「すべて終わってからのこのこと現れるとは!」
「レイバーンどもは西の森から来た!あれほどの大群を見落としたのか」
「一体何をしていたんだ!」
「こそこそと逃げ回っておったのであろう」
「勇者たちがいなければ、どうなっていたことか!」
「それでも騎士団長か!」
「ヴァルグレイン家全体の問題だ!」
「娘の後始末をどうつける気だ!」
「お静かに!」
元老院、副議長ローヴェンが机を打つ。
「此度の件、レイシア・ヴァルグレインは王国騎士団としての役割を全うせず、王都を危機に晒した」
「多くの犠牲者が溢れ、未だ見つからぬ者も多数......団長一人では抱えきれぬ損害である!」
「このことから.....我ら元老院はレイシア・ヴァルグレインのみならず、ヴァルグレイン家全員に極刑を望む次第であります!」
ローヴェンが猛々しく拳を振り下ろし、机を叩いた。
皆が激しく同意する。
ヴァルディア王が右手を挙げた。
「ご静粛に!王がお話しなさる!」
ゆっくりと口を開く王。
「ヴァルグレイン家全員への極刑は認めぬ」
――「ヴァルグレイン家は建国500年の間、忠義を尽くし、この国に貢献してきた。だが騎士団長としての責は重い」
少し考える王......
「レイシア・ヴァルグレイン。そなた一人の生命を持って、償うがよい」
「ヴァルグレイン家は王都追放に処す」
「最後に何か言いたいことはあるか」
ヴァルディア王がレイシアに目をやる。
「......はい......。西の森ではレイバーンのみならず、あらゆる魔物が急速に数を増やしております......必ず次があると考えます。どうか、今以上に防御策をお考え頂きたく......」
落ち着いた声。
王を真っ直ぐに見据え、レイシアが語った。
―まだ騎士団長気取りか。
死ぬ直前まで王国を案じるとは、つくづく救いようのない女だ。
しかしこれで、民の結束も深まり復興も進むであろう......
ローヴェンがほくそ笑む。
王が口を開く。
「最後の言葉、承った!」
「処刑は明後日、早朝に執り行う!広く知らしめよ!」
―――
テンの連行を見たレイシア。
今ここで自分が行ってコトを荒げるより、すべて説明した後で解放した方が良いと考えた。
まずは家族に会いたい。
ヴァルグレイン家、王都に屋敷があるが、普段は城に駐留している。
しかし、城門に入ったところで衛兵に捕えられた。
王都にいる "耳" が、元老院副議長、ローヴェンに報告したのだ。
――
......オルディス議長不在の今、議長代理として務めを果たす.....これはまたとない好機!
議長の座を狙うローヴェン。
オルディス家と縁の深いヴァルグレイン家も、ここで潰してしまえ......
すぐさま城の地下牢に幽閉されるレイシア。
――
「父を!父を呼んでください!」
何を言っても聞く耳を待たない衛兵。
「そうだ......総司令官!ゼルヴァン殿を!ゼルヴァン殿に合わせてくれ!私は騎士団長、レイシア・ヴァルグレインだ!」
「レイシア殿、もちろん存じ上げております。しかし、一切の会話を禁じられております。申し訳ありません」
衛兵はそう言って背を向けた。
その日の夜、異例の速さで軍事法廷は開かれたのだった。
第36話に続く。
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