第34話
何が起こったのか......
――わかっていることは、
目の前に、あの巨大なレイバーン。
フラフラと起き上がるも、意識がほとんどないようだ。
今しかない。
「ガルド!」
「お、おう!」
リオンはありったけの魔力を込め、ガルドに跳ぶ。
リオンの両足を大楯で受け、飛ばした。
巨鳥の頭上、渾身の一撃を放つリオン。
クチバシから頭、縦に割れた。
崩れ落ちる巨鳥。
「勝つぞ!」
着地したリオンが叫ぶ。
困惑し、固まっているレイバーン達。
炎が包む。
矢が貫く。
一体が飛び、逃げた。
それに釣られ、次々と飛び去る。
静けさが訪れた後、歓声が沸き起こった。
―――
「ありがとう、僕は大丈夫。君は大丈夫なのかい?」
ヒールをかけようとするアリアに、リオン。
「大丈夫よ。大変だったけど」
そう言って微笑む。
まだフラフラするが、魔力もある程度回復し、体力も少し戻った。
お腹の子も安定しているようだ。
アリア達が傷ついた兵士や避難民の治癒を終える頃には、夜中になっていた。
中庭で焚き火にあたりながら、腰掛け、食事を摂る勇者パーティー。
「あれは一体何!?」
セリーンが大きな声を出す。
「さっぱりわからない。でも、あれは......人ではないよね」
リオン。
「人の形はしていたぞ」
ガルド。
「城に落ちたっきり......」
不思議がるアリア。
「......あいつを、恐らく、一発だ。一撃で」
リオン。
「あぁ、とんでもなく強い。強すぎる」
ガルド。
「正直怖いよ。全く勝てる気がしない」
リオン。
「敵じゃないことを祈るしかないわね」
セリーン。
「あぁ、たぶん、狙って落とした。あそこに」
リオンが目を向けた先、大きな穴が空いている。
(魔力を感じなかった)
(まったく)
リズが砂に書く。
「純粋な肉体の強さだと言うの!?寒気がするわ......」
セリーン。
黙り込む一同。
――「勇者殿!こちらにおられましたか!」
ゼルヴァンが駆け寄る。
思わず両腕で腹を隠すアリア。
「王が、明朝にお会いしたいと」
「わかりました」
リオンが応える。
「よろしく頼みます」
そう言って離れ、生き残った兵士に指示を出すゼルヴァン。
「家族が心配。少し休んで魔力が回復したら行くわね」
セリーンが横になる。
――クレイスがどこかで待っているはず。
情報を集めなきゃ。
「私も心配......明日、馬車を借りて村に向かうわ」
アリア。
(一緒に行く)
リズが描く。
「心配だから僕も行くよ。王の用事が済んだら追いかける」
リオン。
「俺も行くぜ!とりあえず、酒を探してくる!」
そう言うとガルドは立ち上がり、城へ向かった。
―――
「レイシアさん、僕は夜のうちに出たほうがいいんじゃ......」
レイシアとテンは城から離れ、王都北門から少し離れた空っぽの馬小屋にいた。
王都に帰ってきたんだ......
レイシアは感慨に耽りながら、王都で拾ったパンを口に運ぶ。
何ヶ月ぶりのパンだ......
拾ったものを食べるなんて、慣れとは怖いものだ......
今では一人で森に入っても食料には困らないだろう。
王都に居た頃の自分が見たら大層驚くだろうな......
「......聞いてます?」
「......そういえばお前、また縮んだぞ。今は2メートル半ぐらいだ」
「そうなんですね!もっと強いヤツと戦えば普通に戻れるのかな......」
「おそらく......新しい痣が肌の色だ。元に戻るのかもな」
新しい痣は左肩から左腕、指の先まで。上は顎の少し上まで広がった。
縮んでいく身体。
小さくなってはいるが、強くなり続けている......
背に乗り、ずっと触れていたレイシアは感じ取っていた。
――今のテンなら、国を相手にしても勝ってしまうのでは......
......それはそうと、これからどうする......
そういえば、ゼルヴァンと目が合ってしまった......
気づかれたかも知れない。
どう誤魔化す……
いや、誤魔化せる相手ではないな。
いっそテンを連れてゼルヴァンに会い、全て話した方がいいか……
――何かが頬をつついた。
「ん......」
「わぁ!」
驚き上体が跳ね起きるレイシア。
寝てた!
眠ってしまっていた!
朝だ!
「ひっ!」
目の前で子どもが尻餅をついた。
男の子だ。
「うわっ!生きてるー!」
叫ぶ。
「わー!オンナのゴブリンとハダカのゴブリンキングー!」
馬小屋の外で覗いていた子どもたちが叫ぶ。
確かに。
私はゴブリンに貰った緑色の布を巻いている。
「あ、あれ!?」
テンも目を覚ます。
「やっつけろー!」
小石が飛んでくる。
しまった......
テンと過ごして少しばかり......いや、かなり......
鈍感になっている......
頭を抱えるレイシア。
「石投げるのやめなさい〜!」
テンが声を上げる。
「うわー!ゴブリンがしゃべったー!」
「逃げろー!」
「おかーさーん!」
子供たちが走り出す。
「はぁ......」
ため息をつくレイシア。
「おい、裸のゴブリン。少し待ってろ」
レイシアは緑の布を脱ぎ、テンに投げつけた。
―――
「おい、あれ!」
「あ!あれはレイシアさんじゃ!?」
「お帰りなられた!」
肌着姿で王都に入ったレイシア。
ここにレイシアを知らぬ者はいない。
男たちは早速、王都復興に駆り出されているようだ。
「すまない、服はないか。どんなものでもいい」
「それと大きな布があれば、それも欲しい。礼はあとでする」
服と布はすぐに手に入った。
「よし、これで何とかなるだろう」
馬小屋に戻る。
人だかりだ。
嫌な予感......
テンは衛兵に縛られ、連行されるところだった......
35話に続く。
面白い!と思ったらブックマーク、評価をお願いします。




