第31話
無数の傷。
片目は潰れ、広げた翼は破れ裂けている。
しかし、その存在はとてつもない威厳を放ち、見るものを圧倒していた。
どこから現れたのか、その鳥はゆっくりとヴァルディア城上空を旋回し始める。
――ゼルヴァン総司令官の読み通りだった。
陽が落ちるのを待たず、動き出した。
「大将のおでましか......」
固唾を飲む。
巨鳥はゆっくりと下降しながら、崩れかかった城の頂上に、静かに降り立った。
翼を折り畳み、胸を膨らます。
――鳴いた。
耳を塞ぐほどの咆哮。
王都全土に響き渡る。
ビリビリと振れる司令室、ゼルヴァンが叫ぶ。
「全部隊戦闘準備!何としても守り抜け!一匹たりとも城に近づかせるな!」
―――
けたたましく警鐘が鳴り響く。
城壁を取り囲んでいるレイバーンたちが一斉に飛び立った。
「あいつより上がいるのか!」
東門で戦ったやつより遥かに大きい。
城壁東側に辿り着いたリオン。
魔竜を彷彿とさせる巨鳥に体を震わせる。
城壁の上の兵士はあっという間に見えなくなった。
次々と城壁を飛び越え、侵入している。
――壁に向かって走る。
跳んだ。
両腕に魔力を込め、壁に指を突き立てる。
深く壁に突き刺さった十本の指。
「ぬううぅん!」
力一杯の懸垂、跳ぶ。
壁すれすれに顔が走る。
城壁を越える、すぐさま抜かれる剣、頭上のレイバーンを両断。
そのまま城壁に着地。
「リ、リオン殿ー!」
僅かに残る兵士たち。
下を見ると、レイバーンが兵士や避難民を襲っている。
阿鼻叫喚。
「ここは捨てて、下に降りてください!」
兵士に告げ、跳ぶ。
むんっ、と着地と同時、レイバーンを斬った。
「おおおぉぉぉぉ!」
城の上に向かって雄叫びを上げるリオン。
リオンの叫びにレイバーン達が振り返る。
巨鳥、一瞥するも、すぐに目を逸らす。
―興味がない
そう言われた気がした。
目の前、二体が跳ぶ。
まとめて薙ぎ払う。
その後ろに隠れて跳んだ一体。
浅い。
剣を返し、振り下ろす。
ガチンッ。
鈍い音。
鉤爪に当たった。
止められた。
あいつではない。
だが、あいつぐらい強い。
リオン、後ろに飛び距離を取る。
腕に魔力を込める。
......すうぅと。
ゆっくり剣を振り上げた。
と、一気に間合いを詰め振り下ろす。
避けられないレイバーン、首元から胴が深々と裂けた。
もう一度上の巨鳥を睨みつける。
こっちを向いた。
目が合う。
しかしまたすぐに目を逸らした。
「あいつを倒さなければ......」
あいつを降ろす。
それまではとにかく、目の前の敵を葬る。
乱戦、混沌。
兵士や避難民、すでに半数になっていた。
一体に斬りかかる、すぐに囲まれる。
そこを脱しても、また囲まれる。
「く......きりがない......」
こうしている間にも被害が広がっていく。
闇雲に武器を振りまわす避難民に、疲れ果てた兵士たち......
しかし、先に業を煮やしたのは城の上の巨鳥だった。
グァッ!とひと鳴きする。
リオンの前からレイバーン達が飛び退いた。
デカい三体が近づいてくる。
魔力はあと数回......三発で限界だ。
残しておかなければ......
じわじわと距離を詰めてくる。
一撃で三体いく。
魔力を込める。
リオンは深く息を吐き、目を閉じた。
そのまま、こい......
三体が間合に入った。
目を開き踏み込み剣を薙ぐ、その瞬間。
目の前に落ちてきた。
......人だ。
一瞬の躊躇。
次の瞬間、リオンは地面にめり込んでいた。
第32話に続く。
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