第22話
朝日が空の頂点に達した頃―――ヴァルディア王都に激震が走った。
アリア失踪から八日目。
失踪のニュースに興味を失いつつあった街に、不吉な音が鳴り響く。
「魔物襲来!魔物襲来!」
王都西門の監視兵が叫び、全力で鐘を鳴らす。
それを受け、衛兵たちが巨大な法螺貝を力の限り吹き鳴らす。
昼食を取っていた人々が一斉に建物の中から飛び出す。
皆が空を指差し、驚愕した。
誰かが悲鳴をあげた。
それは次々と連鎖し、やがて街を混沌に変える。
誰かが走り出す。
その恐慌は瞬く間に伝染した。
一度は建物に逃げ込んだ人たちまでもが、東に向かって走り出す。
やがて王都の空を覆い尽くす黒い影。
空高く、高度を保ちながらゆっくりと旋回するレイバーン。
鳴き声も上げず、羽ばたきも聞こえない。
ただただ、飛んでいる。
東門に溢れた人々は後から来る者たちで身動きが取れない。
「順に出られます!押さないで!」
門の幅は広くなく、一度に通れるのは五人程度。
後ろから次々と押され、門が詰まる。
密集した人々の間から、一人、二人と身体をよじらせ抜けて行く。
大きな荷物を持つ者、子どもらを抱えた者、衛兵たちの姿も見られる。
ヴァルディア城内、軍総司令室。
「各部隊、配置完了しました!」
一部隊十名。
総勢二千名、二百部隊が展開している。
この一ヶ月、各地に湧き出る魔物との戦闘を想定し、編成・訓練された部隊である。
盾2、槍3、弓2、剣3で構成される。
その他、魔法使い、ヒーラーが5部隊につき一名ずつ。
ざっくりと、城内に20部隊。
城外、西に60、北に60、東に30、南に30それぞれ展開している。
「空からとは......」
総司令官ゼルヴァンが呟く。
想定外だ。
各地での魔物出現の報告には鳥型の魔物はなかった。
司令室に兵士が飛び込んできた。
「報告!大型のレイバーンと見られる魔物、全てが岩のような物を掴んでおります!」
「なに?」
総司令官が睨めつけていた王都地図から顔を上げる。
と、
ドォンッ......
「な、何だ!?」
その後、何かが崩れる音。
ドォンッ、ドォンッ......
砲撃......!?
落としているのか!
総司令室にいた全員が悟った、その瞬間。
ドォォォォッ!
轟音と共に総司令室が揺れる。
成人の頭ほどもある岩塊が、床に深々とめり込んでいた。
「まさか......」
遥か上空から、雨のように岩が降り注いだ。
―――王都全土へ。
第23話に続く。
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