↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『竜の子』 〜冒険者に憧れるおっさん全裸で異世界に転移する〜  作者: スメコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/43

第12話

 


 ーーーーーー起きて......


 ーーー起きて......


 起き上がるのよ!



 ヒューーーーッ!

 大きく息を吸い込む。


 一瞬、気絶していた。


 ぼやけた視界のピントが合ってくる。


 逃げなきゃ。


 アリアは起き上がろうとする。


 身体に力が入らない。

 もう、魔力がほとんど残っていない。


 この5日間、過度のストレスで衰弱していく自分にずっとヒールをかけ続けていた。


「食事、しとけばよかったかな...」


 アリアは一度うつ伏せになり、両手で身体を押し上げる。

 膝をたたみ、震える足で何とか立ち上がる。


 壁伝いに、開けた穴の下へ行く。


「ん"ん"ん"ん"ん"ん"」


 頭を壁の穴に押し込み、身体を揺すりながら何とか抜けた。


 息を切らしながら窓にたどり着いた。


 やっと......


 カーテンに潜り、窓の鍵を外す。


 開いた。


 月が明るく庭を照らしている。


「え......」




 高い。


 下を覗き込む。

 ここはおそらく3階部分。


 振り返る。


 どうしよう......


 部屋の扉は今にも開きそうだ。


 どうしよう......


 この5日間、"白い部屋" で一人。


 いや、一人ではなかった。


 長い時間をお腹の竜と過ごした。

 腹に手を当て、自分にヒールをかける。

 腹に手を当て、話しかける。


 その青い魔力は温かく、優しい。

 その鼓動は生命を感じさせた。


 芽生えた母性本能。


 アリアは本能的にお腹を両手で抱え、飛んでいた。


 落下中、残ったわずかな魔力でヒールをかける。


 グチャッ


 正座した状態で激突、顔が土にめり込む。



 ーーーーーー



 死の間際......


 呼吸は止まり、心臓は鼓動を失っていく......





 ――――――




 天井が見える......


 仰向けに寝かされている。


 周囲には女たち......白い布を纏い、腰には赤い帯を巻いている......


 皆両手を私のお腹に当てている。


 これは......ヒール......


 私に、ヒールを......



 痛い......


 痛い!


 涙が......


 痛い......


 意識が遠のく......



 ――――――



 楽しい......

 この竜が大好きだ......


 初めて産んだ、この子......


 この子も私が大好きだ......





 突然、眩い光に包まれる。



 ここはどこ......?



 布を頭まで被った人たちにかこまれている。


 怖い......



 ――――――




 ここは......



 戦場......?



 たくさんの人が死んでいる......



 あれは.......



 皆が魔族と呼んでいるモノ......


 元いた世界では異形と呼んでた......



 異形は小さい。

 小鳥のよう。

 そっと忍び寄って、家畜の血を少し吸うだけ。


 そんなに怖くない。


 なのに、この世界の異形は恐ろしい......


 人を食べる......


 ―――


 私の子はどんどん強くなる......


 どんどん大きくなる......


 狩猟竜種――それが私の子。





 大きな、とても大きな異形がいる......




 最後の戦い。




 私はこの子の背に乗っている......


 傷ついたこの子を治癒している......



 私たちは力を合わせて、異形を討った。



 逃げていく異形......




 ――――――



 お別れ......



 辛い......



 悲しい......



 私の子は振り返らずに行く。


 長い戦いだった。


 終わりがなかった。



 私の子は飛んでいく......



 使命を背負って......


 運命を背負って......





 私たちのために......






「ぐぅっ!」


 土に埋まった顔を引き上げる。


「ゲホォ、ゲホォ......」


 口の中から大量の砂が落ちる。


 お腹!

 巻きつけた両手をほどき、手のひらを当てる。


 魔力がほとんど感じられない......

 鼓動が......弱い......


「だめ!」

「もういい!やめて!あなたが死んでしまう!」


 お腹の子は、アリアに魔力を渡し続けていた。

 落下しながら自身にかけたヒールが、継続されていたのだ。


「あなたを絶対に、死なせない」

 アリアは呟く。





 空が白みはじめている。


 早くここを去らなきゃ......


挿絵(By みてみん)




 第13話に続く。

面白い!と思ったらブックマーク、評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。