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冒険者に憧れるおっさん全裸で異世界に転移する。  作者: スメコ


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第十章


あれ......


ここは......


どこかの部屋にいる。


何もない.......


見渡す限りの真っ白な壁。

10歩ほど行ったところに扉がある。


え......


肌着姿だ......



なに......


馬車に揺られていたはず。


停まったと思って目が覚めたら、また眠くなって......


思い出せない......


ーーーーーー



"耳" の仕事は手慣れたものだった。


深夜、林の中を進む馬車の前に切り倒した大木。


当然、停車する馬車。


音もなく御者に近づく。

背後から喉を切り、静かに寝かせる。


すぐさま振り返り、小窓から睡眠と麻痺効果のある薬を噴霧する。



乗員は3名。

アリアと他、男と女は年老いた夫婦。

アリアはバーク村。

この夫婦は途中、ワイス村で降りる。


三人が眠っているのを確認。


夫婦を馬車から降ろす。


取り出したナイフで服を裂き、手際よく身体に傷を付けていく。


ある程度出血させたら次だ。


林の中へ引きずって行き、致命傷となる傷を負わせる。


ナイフの刃は、わざと欠けさせている。

魔獣の仕業に見せかけるためだ。


次は御者を降ろし、倒木にもたれかけさせる。


背中にナイフで傷をつける。

均等な間隔で、斜めに三本。


馬の尻を叩き、逃す。


最後にアリアの服を脱がせる。


脱がせた服で老夫婦の血を拭う。

その服をナイフで切り裂き捨てる。


林に隠してある荷馬車にアリアを隠す。


魔物寄せの匂い袋から中身を取り出し、辺りに撒く。


ここまで20分かからず。


"耳" はアリアを連れ、来た道を戻って行った。


ーーーーーー


混乱するアリア。


と、ガチャ。


ドアが開く。

マスクで顔を覆った男入り、ドアを閉めた。


「お目覚めですね」



誰?

男の声だ。


「あらかじめご説明いたします」


知らない声......


背は低く、細身だが、引き締まっているように見える。


「この部屋は壁が厚く、叫ぼうが暴れようが外に音は漏れません」


何を言ってる......


「お手洗いは隅のバケツをお使いください」


ガチャガチャ。


手を動かそうとしたアリア、体の前で鎖に繋がれていることに気づく。


「これはなに!?」


「そりゃあ驚きますよね。」


「あなたにはこれから、あなたの知っていることを全部お話しいただきます」


呆然とするアリア。

まだ状況が飲み込めない。


「特にお腹の子について......」


ハッとするアリア。


なんで......

なんで知ってるの......


「まあ、気を楽にしてください。まだ痛いことはしませんから」


「水をお持ちしました。毒は入っておりませんのでご安心を」

そう言うと男は水の入ったグラスをアリアの前に置いた。


無機質な声だ。

抑揚がなく感情を感じられない。


アリアは恐怖に青ざめる。


どうしよう......


ここがどこなのか。

窓がないので今が夜なのか、昼なのかもわからない。


あれは誰なの......


リオン セリーン リズ......

私どうしよう......


ーーーーーー


街から離れたヴァルディア郊外。

古びた屋敷だが手入れは行き届いている。


アリアの監禁部屋の隣、老人がテーブルに向かい何か書いている。


コンコン、と部屋の扉を叩きマスクをした男が入る。


「オルディス様、連れて参りました」


「どんな様子だ」


「はい、目が覚めて狼狽えております」


「そうか」


「......はじめろ」


ーーーーーー


「嘘をつくと痛いことをしなければなりません」

「私もそれは面倒なので、本当のことを仰ってくださいね」

「まあ、あなたは治癒師だ。傷つけても治してしまうのでしょうが」


少し間を置く。


「千切れた身体までは治せませんよね」


その言葉に戦慄するアリア。

思わず立ち上がる。


「悪いことはしていない!」


「助けて!誤解なの!誤解してるの!」


男に近づこうとする。



ガチャン


振り返るアリア。


壁に繋がれている。



男は片手で遮り、

「あなたは質問に答えるだけだ」

と冷たく言い放つ。


「さて、はじめましょう」


「二日前、あなたは勇者たちと宿屋にいました」


「そこで話した内容をすべて教えてください。一言一句、全てです」


聞かれていた......!?



動悸が一層速くなり、身体が熱くなる。


......


「そうですね。ではまず......皆がテーブルについた時」


「話し始めたのは誰ですか」


ゆっくりと。

間を空けながら。


落ち着き払っている。



こういうことに慣れている。

アリアはそう悟った。


言えるわけがない。

皆が大変なことになる。


「言えないですよね」


「でもほら、私は聞いていたのですよ?」


「確認したいだけなんです」


優しい口調になった。

それが恐怖を増加させる。


沈黙を貫く......


「私は忙しい。時間はあまりかけられません」


「あなたが話さないと、あなたのご両親、友人に話を聞かなければなりません」


「愛する人に痛い思いはしてもらいたくないでしょう?」



そんな......



涙が溢れ出る。


ゲボッ


アリアは吐いた。



「少し席を外します。よく考えてくださいね」

そう言って男は扉を閉めた。


ーーーーーー


尋問は何日も続いた。


......と思う。


昼夜の感覚がない。


与えられた食事には手をつけなかった。


白い部屋の中、平衡感覚が失われ、アリアは座っていられず、壁に頭をもたげ、かろうじて上体を起こしている。


あの男は悪魔だ......


あらかた話してしまった。


私は殺されるのだろう......


こんな状態にして、解放されるわけがない......


お腹に手を当てる。

少し膨らみを感じる。


青い魔力は暖かく、鼓動を感じる。


あなたも......

殺されてしまうのかしら......



ーーーーーー


「竜の子......」


五日目の深夜。


「やつの話が本当ならば......」


「いや、到底信じられるものではないな......」


「 "耳"よ。お前はどう思う」


「私めはオルディス様の仰せのままに」

男はまだ何か言いたそうだ。


「なんだ、言ってみろ」


「王はアリア発見に懸賞金を懸け、今や街中が捜索に当たっております」


アリアの乗った馬車は林道で発見された。

馬だけ帰って来たのだ。

見つかったのは御者の亡骸のみ。

アリアと老夫婦は発見されず、千切れた服と遺留品が残されていた。


このニュースは世界中を駆け巡った。


「知っておる」


「リオン、リズ、セリーン様も血眼になってアリアを探しておられ、特にセリーン様は魔力操作に長けておいでです。いずれここに辿り着かれる可能性もなきにしもあらずかと」


「処分されるなら早い方が......」


王の懸けた懸賞金は5,000万ヴァル。

これは庶民が一生遊んで暮らせる額だ。

人々は興奮し、仕事も手付かずでアリアを探している。


「そうだな。処分はお前に任せる」


「これから "耳" の集まりがあります。抜けるわけにはいきませぬ。明日でもよろしいでしょうか」


「よい。儂も帰るとしよう。連日家を空けていては怪しまれるのでな」


ガタン

パリンッ


置こうとしたワイングラスが倒れ、床で砕けた。


「歳はとりたくないものだ......」


「片付けておきます」


男は静かに答えた。





第十一章に続く。


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