ティータイム
ビーコンの先の光の1つに飛び込むと、俺達はより純粋な? 光の身体になって衣服が消えてしまった。
「おおうっ??」
「まぁ気にしなくていいよ、上位次元だし。というか、その袋は持ってるんだ」
俺は『純粋な光と化した手提げ型保冷袋』をしつこく持っていた。
ここは様々な映像と音声が浮かんでいた。縄文時代? 平安時代? 戦国、明治、戦中、昭和・・海外の歴史も、これは霞ラボの展示じゃない。
誰かの、いやジェリーフィッシュ症の人達の記憶だ。
「触れると記憶のイメージが意識に入り込んで来るから、気を付けて」
「おお」
「もう少しだけ進もう、安全圏でも『観測ノルマ』があるから」
俺達はジェリーフィッシュ症の人々の記憶の中を飛び回った。
「物理的な事には意味が無いというか、この世界の形はもう失われてしまっているんじゃないか? って今は議論されてる」
「文明が進んでるんだか、滅びてんだか」
「そうだね・・でも平行世界だから、『こっちの私』が『ずっと退屈で、哀しい』というのは、わかる」
久我山が言い終わると急激に気流のようなモノ起こり、俺達は引き込まれだした!
「オイっ、今度はどこに飛ばされるんだ。これ以上脱げないぞっ?!」
「こんなのは初めて! 私だっ、こっちの私が関心を示してるっ。もう! 委員長か先生連れてきたら良かった!!」
「え? 俺のせい? おっ、おお~~っ?!!」
俺達は奇妙な気流に巻き取られ、1つの記憶のイメージに吸い込まれた。この、ジェリーフィッシュ症患者は・・久我山だ。
夜中に発症し、2階の寝室から地中まで透過して、パニックになり『地面ごと』浮上し、上手く呼吸できず、窒息から逃れる為に『土の中から飛び出して』家はくり貫いた地面ごと地上に落下した。
久我山以外の家族は全滅し、周囲の家屋と住人にも深刻な被害が出ていた。
ジェリーフィッシュ症による事故は詳細には報じられない。初めて知った。
夜空で絶叫し、やがて放心し、国の対ジェリー症部隊に久我山は拘束されていた。
気が付くと俺は泣きながら、輝く植物で成り立つ庭園に居た。
もう手を離していたが、固い表情の久我山もいる。2人とも洋風で正装をしていた。俺は保冷袋をあくまで持っている。
俺達の前方にはティーテーブルが有り、洋装の喪服? を着た、久我山そっくりだが目元の辺りだけ奇妙に空間が歪んで見えない女が座っていた。
「招かれちゃったね。どうにか還ろう」
「・・久我山、アイツのせいだろ? 怒っていいんじゃないか?」
俺は涙を拭った。
「きっと死の概念が違う。それにジェリーフィッシュ症が無かったら違う形で、私達が負った苦しみが世界に当たり前に起こっていたはず。『世界が平行する』ってそういう事何だよ、岡倉君」
「わかんねぇよ」
そう答えるのがやっとだった。
俺達はティーテーブルの席に着いた。
喪服の女は光輝く缶のような物を虚空から出して栓を開け、輝く発泡する液体をグラスに注ぎ、飲んで、満足そうにした。
「「「これは好き」」」
久我山の声だが、世界全体が鳴ってるようだった。
さらに喪服の女は俺を指差した。
「「「こっちにこの子はいない」」」
久我山は俺の腕を取った。ジェリー症の力は何も発現しなかったが、痛いくらいだ。
「ダメ。渡さない。岡倉君はただ人が好いだけ。貴女もそのドリンクを飲めるようになったでしょう? これ以上は渡さない」
「「「私から離れようとしている。義理の母親にも妹にも、父親にも、相手にされず、自分への関心を失い、こちらに干渉してきたのは、お前なのに」」」
「オイ、いい加減にしろよ? コレもやるから欲張るのも、知った風な事言うのも、やめろ!」
俺は保冷袋から冷え冷えになってる電子煙草をティーテーブルに乱暴の置いた。
これで済まないなら不本意だが『男女平等ドロップキック』をお見舞いするぞっ?!




