2年3組の友達
俺達の高校は秋に体育祭をやるから文化祭は5月に行う。
開催が早過ぎて、去年は正直皆探り探りだったが、クラス替えを差し引いても今年の2年生は慣れた空気があった。
例外もあるんだろうが高校も2年になると文理も分かれ、サバサバしてくるもんだ。
とにかく文化祭の準備が始まっていた。
「クオリティを高めよう! 久我山さんがいるのに『ショボいお化け屋敷』とか絶対無い!!」
ホームルームで気張るクラス委員の眼鏡女子。ハードル上げたな・・
海月、こと久我山瑞季はすっかりクラスに馴染んでいた。人気者と言ってもいいくらい。
特に害の無いキャッチーな異能持ちで、淡白で、それでいて愛想は悪くない。むしろあれこれ質問しても根気よく相手してくれる。
スタイルも良く、成績も良く、うっかりすると半年後には消えてしまう儚さ・・
よほど斜めに構えたヤツ以外は好印象でチヤホヤしていた。
俺みたいな数人の斜め構え組も関わらないだけで、攻撃しようってのまではいない。
俺は当日までは田中達と大道具作りの班の1つに入った。中々タイトなスケジュールで電子煙草を吸う暇も無い
大道具作りは場所取りがわりと面倒で、俺達は移動を重ねた結果、中庭のソテツの木の脇のよくわからない辺鄙な場所で作業していた。
田中が無くなった塗料を取りに行き、もう1人がトイレに行き、俺が1人で漫研の連中が描いたデザイン画を元に『不気味な壁』を作っていると、
「にょきっ」
自分で効果音を言って久我山瑞季が地面から出てきた。メイクはしていないが制服の上から衣装の着物を羽織っている。
「ダルい」
一瞥して一言述べると、ふふっ、笑って周囲を浮遊しだした。ホントに幽霊みたいになってるぞ?
「文化祭の準備楽しいよね」
「久我山が来たからって皆、張り切り過ぎ。便乗だろ?」
「皆、良くしてくれる。・・発症してからずっと検査検査、治療治療、訓練訓練だったから、ホッとしたよ」
「ただの高校生活だからな。これだけで『やり残した事無い』みたいなのやめろよ? 大袈裟」
「うわ~、洋夢君っぽいな」
俺は呼び方に鼻白んだ。
「私の事も瑞季でいいよ? 女子の3割くらいはそう呼んでくれてるし」
「呼ばない。あんたも俺の事は名字な」
「あんただって! あ、そろそろ田中君が来そう、じゃあねっ。前もらったコーラ美味しかったよ?」
久我山瑞季は身体を透かして壁を通り抜けて去っていった。
「何週間前の話だよ?」
アイツ、妙に人気者みたいになったから楽に話すのにちょうどいい、みたいに認定してきてないか?
文化祭の俺達2年3組のお化け屋敷は大盛況だった。そりゃそうだ、ある意味『本物』が1人混ざってる効果はデカい。
当日対応の俺達のシフトは午前中に終わり、田中達と暫く校内を冷やかして回ってから俺は1人で映研や光画部何かの時間を潰せる部や同好会の展示や上映会等を見て回っていた。
文化祭はカップルが急増するイベントでもあるから、辟易しつつ何とはなしに人のいない方にブラブラ歩いてくと、『2階の窓の外』に視線を感じ振り向いた。
大きな葉桜の天辺近い枝の陰に完全な幽霊メイクと衣装で扮装した久我山瑞季が座って、コーラを飲んでいた。
目元だけで笑って片手を軽く振ってくる。
「・・ポップなゴーストだぜ」
俺は手に持っていたカップのおでん串を軽く持ち上げて応え、歩き去った。
文化祭の打ち上げは久我山瑞季を中心に、もう卒業したのかよ? というくらいの大騒ぎになった。
「私達、ずっと友達だから!」
盛り上がる2年3組。笑顔でほどほどに応えてる久我山瑞季。やり過ぎ。
かといって途中で抜けるのもまた感じ悪い。俺は『無の顔』でカラオケ店のタンバリンを叩き、文化祭よりもテンションを上げてる軽音部の連中をアシストしていた。




