繋がり5 互いを引き出す
音楽室 放課後
ツナグ「相応しい歌詞を用意する」
ツナグ「だから――」
最高の音を鳴らせよ
一拍。
ヴェル「……は?」
ヴェル「それってつまり――」
ヴェル「お前の歌詞がショボかったら
俺の音もショボくなるってことか?」
ツナグ「……さあ?」
ヴェル「……っは」
笑う。
ヴェル「いいじゃねえか」
ヴェル「やってやるよ」
ギターを構える。
ヴェル「最高の歌詞――」
引きずり出してやる
音が跳ねる。
さっきとは違う。
“試す音”から、“壊しにくる音”へ。
ツナグ「……」
ツナグ「いいな」
ツナグ「その音」
一歩、踏み込む。
じゃあ
魅せてやるよ
最高で返す
音がぶつかる。
歌が、生まれる。
もう
消えて 失って
全部 なくして
こんな未来になるのかよ
ヴェル「(……なんだよこれ)」
これが欲しかった?
――違うだろ
ヴェル「(叫びか? 嘆きか?)」
ギターがさらに強くなる。
削る。
抉る。
感情ごと引きずり出す。
ツナグ「……っ」
欲しかったのは
こんな絶望じゃない
わかってたはずなのに
手のひらには――
残ってるのは絶望だ
ヴェル「(乗るなよ、普通)」
ヴェル「(崩れろよ)」
――乗る。
ヴェル「(……は?)」
崩れない。
ツナグ「(……なんだ)」
ツナグ「(止まらない)」
もうイヤだ
全部 変えればいいんだろ?
音が加速する。
ぶつかる。
絡む。
噛み合う。
ヴェル「(……誰だ)」
ヴェル「(こんなまとまり方する音じゃねえぞ)」
ツナグ「(……おかしい)」
ツナグ「(好きにやってるだけなのに)」
音が――揃う。
一瞬。
完全に。
ヴェル「……っ!」
ツナグ「……!」
壊せばいい
否定すればいい
全部 全部
――繋ぎ直せばいい
ヴェル「(……繋がってる?)」
ツナグ「(……誰が?)」
「我慢してるんじゃないよ!?」
「もっと
感情を剥き出しにしなよ!?」
「繋いであげるからさあ!?」
——その瞬間。
音が変わる。
ヴェル「……っ!?」
ツナグ「……な……!?」
さっきまでの“ぶつかり合い”が消える。
代わりに生まれるのは——
“流れ”。
ヴェル「(なんだこれ……)」
ヴェル「(弾かされてるんじゃねえ……)」
(弾きたかった音が
勝手に出てくる)
ツナグ「(……違う)」
ツナグ「(言葉を選んでないのに)」
(言いたかった言葉が
勝手に溢れてくる)
今すぐ消えろ
こんな絶望
今すぐ壊せ
こんなリアル
ヴェル「(俺のロックに――)」
ツナグ「(歌が――)」
同時に。
ヴェル「(乗ってきやがる!)」
ツナグ「(引き上げられてる!)」
さらに一段、上へ。
ヴェル「……ダメだ」
ヴェル「……止まらねえ」
ツナグ「……止まらない」
ツナグ「……いや、止めたくない」
音が、跳ねる。
爆ぜる。
それでも――崩れない。
むしろ、完成に近づいていく。
ヴェル「……はは」
ヴェル「なんだよこれ」
ツナグ「……」
ツナグ「……なんだこれ」
二人同時に、息を吐く。
これが
“繋がる”ってことかよ
音が、終わる。
余韻。
静寂。
――その中に。
細く。
ずっと鳴っていた音。
ヴェル「……」
ツナグ「……」
ゆっくり、振り返る。
ツナグ「……おい」
ヴェル「……ああ」
そこにいた。
ツナグ「ずいぶん
勝手に混ざってくるな」
一拍。
ツナグ「……カナデ」




