繋がり4 あの日課はムダではなかった
朝 教室
ユミ「カナデ~?遅刻~?」
カナデ「ヴァイオリン持ってて
走れなくって~」
ユミ「どうせ髪とかメイクとかでしょ」
カナデ「全部バレてる~」
ユミ「図星か~」
――ガラッ
ツナグが入ってくる。
ユミ「マザル君も遅刻?」
挨拶は、返らない。
ユミ「……無視?」
カナデ「いつものこと」
ユミ「ほんとさ
挨拶も返せないとか――」
一瞬。
カナデ「……言い過ぎ」
ユミ「……え」
カナデ「ツナグは
返さないんじゃない」
カナデ「返せないだけ」
ユミ「そんなのある?」
カナデ「あるよ」
一拍。
カナデ「ツナグだもん」
ツナグ「……」
(相変わらずだな)
(強い)
(僕と違って)
放課後
山積みのプリントを抱えながら歩く。
ツナグ「……良いように使ってくれるよ
うちの担任は」
――そのとき。
音が、刺さった。
ツナグ「……?」
エレキギター。
強い。
荒い。
叫んでいるような音。
(なんだ、この音)
(優しくないのに)
(……気になる)
足が止まる。
音楽室の前。
ツナグ「……」
ヴェル「おい」
ツナグ「え?」
ヴェル「聴いてんだろ」
ドアが開く。
そのまま腕を引かれる。
音楽室
ヴェル「どうだ」
ギターを構えたまま、ニヤッと笑う。
ヴェル「俺の音」
ツナグ「……初めて聴いた」
ヴェル「褒めてんのか?」
ツナグ「たぶん」
ヴェル「たぶんかよ」
一拍。
ヴェル「……歌えよ」
ツナグ「……え?」
ヴェル「この音に」
ギターが鳴る。
ツナグ「……」
ヴェル「無理だろ普通」
ヴェル「初見の曲で
歌詞なんて――」
ツナグ、マイクを取る。
ヴェル「……は?」
一音、乗る。
ズレない。
ヴェル「……おい」
ツナグの目。
“続けろ”と語っている。
ヴェル「……」
ギターを鳴らす。
ツナグが歌う。
言葉が、その場で生まれる。
いつだって
うまくいかなくて
全部 投げ出して
逃げてきたんだろ
ヴェル「……は?」
ヴェル「ちょっと待て」
止まらない。
止められない。
何が欲しかったのかも
わからないまま
わからないものを
否定して
ヴェル「なんでだよ」
ヴェル「初めてだろ、この曲!」
ツナグ「……うん」
ヴェル「なんで合わせてくる!?」
ツナグ「……?」
普通に、歌っている。
ヴェル「……はは」
ヴェル「意味わかんねえ」
笑う。
ヴェル「いいじゃねえか」
ギターが強くなる。
試すように。
揺さぶるように。
ヴェル「これでどうだ」
ツナグ「……」
崩れない。
それで
何が残った?
ヴェル「……マジかよ」
ヴェル「崩れねえ」
目の色が変わる。
ヴェル「おい」
ヴェル「お前――」
言葉が、途切れる。
ヴェル「……おもしれえ」
ギターが唸る。
ツナグ「……」
一瞬だけ、思い出す。
朝。
神社。
カナデの音。
ツナグ「……」
ツナグ「やっぱ」
ツナグ「ムダじゃなかった」
ヴェル「あ?」
ツナグ「毎朝のセッション」
ツナグ「ちゃんと繋がってた」
一歩、前に出る。
ツナグ「……ここからサビだろ」
ヴェル「……!」
ツナグ「舞台は整えた」
ツナグ「だから――」
最高の音
鳴らせよ
ヴェル「……っは」
ヴェル「そのセリフ」
ヴェル「こっちのだろ」
ツナグ「……?」
ヴェル「いいねえ」
ヴェル「最高だ」
ギターが爆ぜる。
ツナグ「……なんだよ、この音」
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