繋がり3 だから君の名前は
君たちは
いつも ここで
セッションしてるの?
朝 神社
ツナグ「……えっと」
ネア「あぁ、ごめん。紹介がまだだったね」
少しだけ笑って。
ネア「私はネア・シーンス。高校3年生」
ツナグ「僕は、ツナグ・マザル」
カナデ「私は、カナデ・トケルです」
ネア「ふーん……」
二人の名前を、ゆっくりなぞるように。
ネア「ツナグとカナデか」
ネア「……ねえ」
少しだけ首を傾げる。
ネア「運命が出逢わせてくれたような
そんな二人の名前だね?」
カナデ「よく言われます」
ツナグ「本名なんですけどね……」
ネア「でもさ?
”君”じゃないんだね」
ツナグ「......え?」
ネア「さっきの歌」
ツナグ「......それは」
一瞬、言葉が止まる。
ネアはそれを見て――
ネア「……そっか」
ネア「じゃあツナグ君は、“繋ぐ”からツナグ?」
ツナグ「……えっと」
カナデ「それはですね――」
ツナグ「やめてくれ!!」
カナデ「えー?」
ツナグ「絶対に言うなよ!?」
カナデ「この国には“言うな”って言われると
言いたくなる文化がありましてね?」
ツナグ「マジでやめてくれ!!」
カナデ「マジでしてくれ、でいい?」
ネア「……ふふ」
ネア「いいね、そういうの」
ネア「ちゃんと会話してる感じがする」
ツナグ「ちゃんと……?」
ネア「うん」
ネア「言葉だけじゃなくて」
ネア「……間とか、空気とか」
ネア「ちゃんと繋がってる」
ツナグ「……」
少しだけ、言葉に詰まる。
ネア「でもさ」
何気ないトーンで続ける。
ネア「男の子と女の子で毎朝セッションしてたら、
学校で勘違いされない?」
カナデ「それはいつものことです」
ツナグ「されてねえだろ!?」
ネア「ふふ……やっぱ面白いね」
ネア「ツナグとカナデ、か」
少しだけ遠くを見るように。
ネア「まるで――」
間
ネア「最初から“繋がるために”用意されたみたいな名前だ」
ツナグ「……」
カナデ「……」
ネア「ねえ」
ふっと、空気を戻すように。
ネア「邪魔じゃなかったらさ」
ネア「また聴かせてよ」
カナデ「ぜひ」
ツナグ「ええええ!?」
ネア「少年は不満?」
ツナグ「不満っていうか……」
視線を逸らす。
ツナグ「僕、人に聴かせられるような歌じゃないし……」
ネア「……」
ほんの一瞬、表情が変わる。
ネア「優しい声だね」
ツナグ「……え?」
ネア「カナデの音、ちゃんと聴いてる」
ネア「......寄り添ってる」
ツナグ「……」
ネア「また聴きたいのは本当だし」
ネア「ここに来れば、会えるんでしょ?」
カナデ「毎朝ここでやってます」
カナデ「よかったらどうぞ」
ネア「ありがと」
少し背を向けて、歩き出す。
ネア「じゃあ、そろそろ学校行くね」
ネア「またね、少年。カナデ」
数歩、進んで――
止まる。
振り返らずに。
ネア「――あ、でも」
一拍
ネア「逃げないでね?」
(ほんの少しだけ間)
ネア「……音から」
そのまま、去っていく。
カナデ「……ネアさんって
……なんか」
(少しだけ考えるような間)
ツナグ「どうしたの?」
カナデ「……ううん、 なんでもない」
ツナグ「でも
これから毎回、聴かれるの……?」
カナデ「残念?」
ツナグ「なんでだよ」
カナデ「だって――」
少しだけ、悪戯っぽく。
カナデ「二人だけの時間、減っちゃうじゃん?」
ツナグ「……そうやってからかうのやめろ」
カナデ「ふふ」
カナデ「じゃ、そろそろ学校行こっか」
ツナグ「……あ」
ツナグ「やば、遅刻する!!」
ツナグ「走るぞ!?」
カナデ「えー」
カナデ「走ると――」
髪も乱れるし
汗もかくし
制服も乱れるし
日焼け止めも落ちるし
ヴァイオリンもあるし
カナデ「だから――」
カナデ「遅刻する」
ツナグ「開き直るな!!」
ツナグ「走るぞ!!」
カナデ「えええええ!」
……結局
僕らは遅刻した




