繋がり2 ツナグとカナデ
――大嫌いなんだよ
自分の名前が
カナデ「……」
カナデ「……私は好きだよ」
ツナグ「え?」
カナデは、まっすぐ言った。
カナデ「――私は、ツナグが大好き」
ツナグ「……」
ツナグ「それって……
(僕のこと?
それとも名前?)」
カナデ「どっちだと思う?」
少しだけ笑って、続ける。
カナデ「それにね。私も、自分の名前好きなんだ」
ツナグ「……カナデ?」
カナデ「うん。カナデって名前だから、“奏でる”って選んだの」
ツナグ「……」
カナデ「奏でられるとね――」
一歩、近づく。
カナデ「君の歌声に、私のメロディを重ねられるの」
ツナグ「……」
カナデ「それって、すごく素敵じゃない?」
ツナグは、何も言えない。
カナデ「だからさ」
ヴァイオリンを取り出す。
カナデ「奏でるから――繋いでよ」
ツナグ「……」
カナデ「君の歌声と、私の音を」
少しだけ、挑発するように。
カナデ「ね?」
ツナグ「……」
ツナグ「……僕に、できるかな」
カナデ「できるよ」
迷いなく、言い切る。
カナデ「だって君は――ツナグだから」
ツナグ「……」
ツナグ「……ズルいよ、それ」
カナデ「ふふ」
構える。
カナデ「――始めるよ?」
ヴァイオリンの音が、朝の空気に溶ける。
明るくて、軽くて、少しだけ無邪気で。
まるで、子供たちが笑ってるみたいな音。
ツナグ「……即興で歌詞つけろって
……どれだけムチャ言ってるか
……知ってる?」
カナデ「――君ならできる
だって君の名前はツナグだもん」
ツナグ「……」
一拍、息を吸って――
ツナグ「……わかったよ」
そして、小さく呟く。
ツナグ「――繋いでやるよ」
歌い出す。
今日も貴女と出逢って
また別れて
それでもまた出逢って
……気づけばさ
ずっと一緒にいるよな
この気持ち
名前は知ってるけど
ちゃんと理解はできてない
カナデの音が、寄り添う。
ツナグの声が、それに重なる。
貴女の音に
僕の声を重ねて
繋いでいく
「ここにいるよ」って
ちゃんと届くように
貴女と――
繋がっていたい
一瞬、言葉に詰まる。
でも――止めない。
どうしてだろう
貴女のことばっかり考えてる
こんなの
知らなかったのに
……これが
わかってるはずなのに
わからない気持ち
音が、強くなる。
心が、追いつかなくなる。
伝えられないのは
もっと嫌だ
だから
今、ここで
全部――繋ぐ
貴女のメロディに
僕の歌声を繋いで奏でる
貴女の音だけは
ーー絶対に、聞き逃したくない
貴女とーー
繋がっていたい
この世界で、たった一人でもいいからーー貴女に届けばいい
音が止まる。
声が止まる。
ツナグ「(僕はカナデのことを”君”ではなく”貴女”と呼ぶ
その理由はーーまだ、言えない)」
静寂。
そして――
カナデ「……すご」
ツナグ「……」
少しだけ、息を飲むように。
カナデ「......ほんとに、すごいよ」
カナデ「今の、即興でしょ?」
ツナグ「……まあ」
カナデ「やるじゃん
ここでツナグとカナデ
二人の名前を歌詞にするなんて」
ツナグ「違うよ」
少しだけ目を逸らして。
ツナグ「即興だから……名前、使っただけ」
カナデ「ふふ」
カナデ「それでも、すごいよ」
――その時。
「……いいね」
ツナグ「え?」
カナデ「……え?」
後ろから、声。
「いいセッションだった」
カナデ「ちょっと!?」
ツナグ「誰だよ!?」
その女は――最初から全部聴いていたような顔で笑っていた。
「朝から、いいもの聴かせてもらったよ」
一歩、近づく。
「ねえ、君たち」
少しだけ間を置いて――
「いつも、ここでやってるの?」




